新型コロナ超入門 次波を乗り切る正しい知識

著者水谷 哲也
発行所東京化学同人
刊行2020/10/01(第1刷)
入手九大生協で購入
読了2021/12/26

去年の本なので、新型コロナ本としてはもはや古いと言えば古いが、店頭で見て、検査について詳しく書かれていそうなので 買って読んでみた。

第3章までと第9章は報道されているようなことに関してで、話題になっているトピックに対する著者の意見なども書かれている。 たとえば、いわゆるファクターX(日本など東アジアで感染が少ない理由)に関しては、著者はBCG接種はあるかもしれない と考えているが、近縁ウイルスへの既感染に関しては否定的である。

第4章以降にこの本の特徴が現れている(以下にサマリーも書いた)。第4章はペットへの感染の問題で、 これは著者がもともと獣医学部卒であることと関連しているのだろう。第5章は遺伝子の読み取り方が書いてあって、 遺伝子解析サイトが紹介されているのが面白い。塩基配列を入力すると、似たゲノムを探し出してくれる web サイトがある。 第6章と第7章は、ウイルスが感染し複製するまでに、細胞では何が起こっているかの解説。 第8章はウイルスの検査法。これがきちんと書かれているのがありがたい。検査の話は報道で良く出てくる割に、 具体的な方法の解説を見ることは意外に少ない。

サマリー

第3章までは略。

第4章 ペットへの感染を食い止めろ―獣医から見た新型コロナウイルス―

新型コロナウイルスはペットにも感染する。とくに猫に感染することが確かめられている。 ただし、症状が出ない場合が多いようだし、ヒトよりも早く陰性になるようである。 しかし、感染した猫がほかの野生生物に感染させて、野生生物に感染が蔓延したりすると、 人間がコントロールできなくなるので要注意である。

第5章 未知のウイルスを発見する方法を体験する

ウイルスの遺伝子を読む方法の概要説明。

  1. ウイルスを含んだ液体から RNA を抽出する。
  2. 混ざっている DNA を酵素で壊す。
  3. 逆転写酵素を使って RNA を DNA にする。
  4. 次世代シーケンサーを用いて塩基配列を読み取る。
  5. 読み取った配列を遺伝子解析サイト Nucleotide Blast に入れて、 データベースにある配列と比較する。

第6章 新型コロナウイルスが細胞に感染するまで

SARS-Cov-2 の細胞への侵入の模式図 by 竹田誠(国立感染症研究所)

第7章 新型コロナウイルスはどうやって増えるのか

ウイルスの中身が細胞に入ると:

  1. まず、mRNA が複製される。プラス鎖の RNA からマイナス鎖の RNA が作られ、それを鋳型として、 プラス鎖の RNA が大量に作られる。新たに作られる mRNA には、転写のスタート地点が異なる 11 種類があると考えられている。
  2. mRNA はリボゾームに行って、そこで蛋白質を作ってもらう。蛋白質には、ウイルス粒子を形作る構造蛋白質以外に 酵素などの非構造蛋白質がある。
  3. 構造蛋白質は、小胞体からゴルジ装置に運ばれ、mRNA ゲノムと組み合わされてウイルス粒子になる。
  4. できたウイルス粒子は細胞外に放出される。

第8章 新型コロナウイルスの検査法をしっかり頭にたたきこむ

第9章も略。