本テレビ講座は、昔の名画を真似て筆ペンで和風イラストを描いてみようという楽しい企画である。 筆ペンと言えば冠婚葬祭の時にしか使わないものと思っていたが、和風の絵を描くのに使えるというのは面白い。 普段は弔事用の薄墨も、陰影を付けるのに使える上、最近はカラーの筆ペンが各社(呉竹、ぺんてる、あかしや など)から出ていて、 彩色も自在である。墨を磨ったり筆を洗ったりする必要がないので手軽だし、それでいて筆のような表現が可能である。 カラーの筆ペンは、水性ブラッシュマーカーなどとして、水墨画の延長というよりは、むしろお手軽水彩画という位置づけで 売られている場合も多く、ネット検索すると、数多くの種類が出ていることがわかる。 さらに、amazon で "watercolor brush pen" と検索すると、海外製らしきものがたくさんでてくる。
してみると、筆ペン画と水彩画の違いは何かといえば、筆ペン画は線を生かして描き、水彩画は面的に描いてゆくということだと思う。 本講座で取り上げられている中では、「鳥獣戯画」が太さの変化のある線で描かれているので、最も筆ペン画的で、 土牛の「醍醐」が面で描かれた最も水彩画的な絵ということになる。
筆ペンには、ペンタイプのものと毛筆タイプのものがある。両方使ってみるとわかるが、ペンタイプというのは、 フエルトペンのようで一見描きやすいように見えるが、筆圧のコントロールが難しくて、なかなか思った太さで 線が引けないし、線の太さが波打ってしまいがちである。絵を描くときには、毛筆タイプの方が線を自由に描けると感じた。 そのせいかどうかわからないが、鳥獣戯画の模写に、テキストではペンタイプの筆ペン(呉竹 二本立かぶら)が用いられていたのに、 放送では毛筆タイプの筆ペン(呉竹 完美王)が用いられていた。ペンタイプが用いられていたのは、第1回だけだった。
日本の筆ペンメーカーとしては、呉竹とぺんてるが双璧なようで、web page を見てもこの2社が飛び抜けて筆ペンに力を入れていることがわかる。 カラー筆ペンでは、呉竹は、多くの種類のラインアップがあって、色も多い。たとえば、ZIG CLEAN COLOR REAL BRUSH は 90 色で展開している。 ぺんてるからはアートブラッシュというシリーズが出ていて、この講座では多く使われていた。 カラー筆ペンでは、このほか、あかしやの「水彩毛筆【彩】」シリーズが、日本の伝統色で 30 色を展開していて、和風の絵には都合が良い。 というわけで、この講座ではその3社の筆ペンを使っているようである(主に、黒とグレーは呉竹、カラーはぺんてるとあかしや)。 呉竹はもともと墨メーカー、ぺんてる創業者は筆職人、あかしやは筆専門メーカーで、やはり筆・墨関連メーカーが力を入れているということのようである。 ネット情報によると、筆ペンを最初に開発したのはセーラー万年筆 (1972 年) だが、本格的に普及させたのは 呉竹 (1973 年発売) で、 ぺんてる (1976 年発売) は 質の良い毛筆タイプで参入したということのようだ。以来、呉竹とぺんてるがトップメーカーということのようである。