思想の免疫力 賢者はいかにして危機を乗り越えたか

著者中野 剛志・適菜 収
発行所KKベストセラーズ
電子書籍
電子書籍刊行2021/08/20
電子書籍底本刊行2020/08/20(初版第1刷)
入手電子書籍書店 honto で購入
読了2021/08/28
参考 web pages関連鼎談:中野剛志×佐藤健志×適菜収

新型コロナウイルスにしても原発事故にしても、危機が起こると世の中に潜んでいた嘘が見えてくる。 本書は、新型コロナ流行の中、保守思想の立場から中野氏と適菜氏が小林秀雄を論じつつ おかしな論壇を批判する対談である。

とくに批判されているのは京大の藤井聡氏である。私も彼が西浦氏批判をし始めたころから変だと思い始めた。 西浦氏の功績は明らかだと思うのに、どうして批判するのかよくわからなかった。 やはり、新型コロナ流行のような難しい問題に対しては、とりあえず困るのが正常な反応であって、 自信満々に語る非専門家には注意したほうが良いという事であろう。その西浦氏も、経済問題など 専門外の問題に関しては困っていた。困る方が正常である。

民主党がダメであった理由も論じられていて、腑に落ちることがあった。これはネトウヨが批判しない点である。 なぜなら、小泉・安倍・菅路線がダメな理由と同じだからである。それは、小沢一郎が主導した、政治改革、構造改革路線である。 小選挙区制が党中央の権力を強め、さらに政治主導によって政治に議論が無くなったため、危機に当たって 凡庸な政治指導者が何もできずに右往左往するという体たらくに陥ったことである。 これは、原発事故でも新型コロナでも危機対応が悪かったことで証明されてしまった。 政治主導というのは、一見スピーディーな対応ができて危機に対応するには良さそうだが、 改革によって有能な官僚も有能な議員も周囲から排除してしまっていたので、判断を誤ることになった。

サマリーというか気になったところのメモ

第1章 人間は未知の事態にいかに対峙すべきか

第2章 成功体験のある人間ほど失敗するのはなぜか

第3章 新型コロナで正体がバレた似非知識人

第4章 思想と哲学の背後に流れる水脈

第5章 コロナ禍は「歴史を学ぶ」チャンスである

第6章 人間の陥りやすい罠

第7章 「保守」はいつから堕落したのか

第8章 人間はなぜ自発的に縛られようとするのか

第9章 人間の本質は「ものまね」である