人種差別がもたらす自己疎外は常に痛ましい。白人から差別される側なのに、白人に同化したい願望があるという ここで描かれている黒人の問題は、これほど大きくはないけれど日本人にもあるということは自覚される。 そうでなければ、こんなに髪を金色に染めたがる人が多くはならないだろう。 同時に、日本人は差別する側でもある。実習生のような名目で日本にいる外国人労働者の問題には、 ここで描かれているような差別構造が内在している。
私は、これまでフランツ・ファノンを知らなかった。 『黒い皮膚・白い仮面』は、若き Fanon の心の叫びのようなものらしい。引用されている部分だけ見ても、 論理的な論考というよりは、詩のような言葉で思いをぶつけている感じである。 最後の一節がそれを象徴している。
Mon ultime prière:
Ô mon corps, fais de moi toujours un homme qui interroge!
私の最後の祈り、おお、私の身体よ、いつまでも私を、問い続ける人間たらしめよ!
ここで、corps と言っているのが、外見が差別の源となり続けると同時に、 その外見がファノンを差別を考え続けなければならない思索の人たらしめる源になっていることを反映している。