学生が Maxima を使い始めたので、私も使ってみようと思い、この本で勉強することにした。 ただし、この本はもう販売されておらず、中身も以下に「細かい点で気づいたこと」で書いたように 少し古い点があるようだ。といっても、Maxima の本はあまり売られていないので、図書館で探して とりあえずこれで入門することにした。ブルーバックスとしても薄めの本で、ざっとであればわりと速く読めるし、 プログラムの入った CD も付属しているということで、それなりには役に立った。
著者はサイエンスライターとして有名な竹内薫氏である。 本書では、例として竹内氏がご専門の素粒子論関係のものがたくさんでてくる。ペンローズのツイスター、 カラビ・ヤウ空間、ボームの量子ポテンシャルに関する図を描くというところがそうである。 いずれもちょっと高級過ぎて、私には図の見どころがよくわからなかったし、どういうプログラムかも よくわからず、その部分は Maxima の勉強にもあまりならない。著者としては、面白い例で工夫したということだと思うが、 物理の勉強としても Maxima の勉強としても中途半端になって、著者の意欲が空振りしているように思う。
書いてあるところによると、竹内氏がMaxima の使い手というわけではなくて、 竹内氏は Mathematica を使っているのだが、それを岡田哲哉氏に Maxima に翻訳してもらって本にしたとのこと。 Mathematica は値段が高いので、ブルーバックス読者向けではないということのようだ。
私は Mathematica のだいぶん古いバージョンを使える環境にいるので、Mathematica と Maxima の比較ができる。 本書で扱われているようなプログラムに関しては、両者の構造はほぼ同じで、ほぼ逐語訳できるのだが、 Mathematica だと [] になるのが、Maxima だと () になるというように、 いちいち記号やコマンドを変えていかないと翻訳できないのが面倒なところである。 というわけで両者ほぼ同様に使えるのだが、Mathematica の方がやはり賢いようで、本書にも Mathematica ではできて Maxima ではできない積分の例が載っている。それは、
- Maxima では integrate((t+7*t^2)^(1/3),t);
- Mathematica では Integrate[(t+7t^2)^(1/3),t]