新しい1キログラムの測り方 科学が進めば単位が変わる

著者臼田 孝
シリーズブルーバックス
発行所講談社
電子書籍
電子書籍刊行2018/05/01
電子書籍底本刊行2018/04
入手電子書籍書店 honto で購入
読了2021/08/13
参考 web pages Wikipedia 「SI 基本単位の再定義 (2019年)」
藤井賢一「プランク定数にもとづくキログラムの新しい定義」

最近メートル法の4つの単位の定義が変わった (2018 年 11 月承認、2019 年 5月施行)。 その施行1年前に書かれた本で、定義改定の経緯がわかりやすく書かれている。 したがって、この本の中で「現在」とあるのは、改定前の状況であることに注意しないといけない。 私がこの本を買ったのは改定直後だったが、しばらく読まずに放ってあって、今夏休み読むことにした。

本書は、とくに質量の標準の改定に関する解説を中心に書かれている。身近な単位でもあり、SI 単位系から原器が消えたことを 象徴する単位でもあるので、これに重点が置かれることは首肯できる。 話はいろいろ込み入った部分があるのだが、全体的にわかりやすく書かれている。 しかし、難しいせいかきちんと書かれていない部分もある。

[細かいミス]
第 4 章図 4.10 の近く
地球の大きさに半径10cmのボールを並べるとほぼアボガドロ数個になるというところで、 2.62×1023×100/52 = 5.04×1023 と計算しているが、 2.62×1023×52/100 = 1.36×1023 が正しい。

サマリー

単位に関する基本概念(第1章)

SI 単位系の定義の変遷

メートルの定義の変遷 (表3-1 を改変したもの)

メートルの定義背景など精度
1795子午線極から赤道までの距離を 1 万 m とした。 フランス革命後、国際標準を作る機運が高まり、グローバルな基準がふさわしいということになった。 白金製原器も作られた。 6×10-5
1889原器国際キロメートル原器の水の融点温度における長さ。 1875 年、メートル条約締結 (17ヵ国)。イギリスのジョンソン・マッケイ社が高品質の白金イリジウム合金で原器の材料を作る。 10-7
1954原器国際キロメートル原器の20℃における長さ。 温度測定技術や空調技術の進歩。 10-7
1960光の波長決められた条件下のクリプトン86の波長の1650763.73倍。 光の干渉技術の進歩。 10-8~10-9
1983光の速さ真空中の光の速さを 299792458 m/s とする。 レーザー技術の進歩。この定義は特定の物質に依存していないので、技術の発達によって定義を変える必要がない。 この定義だと、光の飛行時間、光波干渉など、様々な技術によって現示することが可能になる。 10-10(当初)~2×10-11(現在)

秒の定義の変遷

秒の定義背景など精度
はじめ自転 一日の 1/86400。
1956公転 一年の 1/31556925.9747。 自転速度変動の影響を受けない基準への変更。
1967/68Cs 原子 133Cs の原子の基底状態の2つの超微細構造準位の間の遷移に対応する放射の周期の 9192631770 倍。 原子周波数標準の研究の進展。 10-15~10-16

キログラムの定義の変遷

キログラムの定義背景など精度
1798原器水1立方デシメートルの重さに相当する金属原器の質量。 フランス革命後、国際標準を作る機運が高まり、白金製原器も作られた。
1889原器国際キログラム原器質量。 1875 年、メートル条約締結 (17ヵ国)。イギリスのジョンソン・マッケイ社が高品質の白金イリジウム合金で原器の材料を作る。 10-9(当初)~5×10-8(原器の安定性); Cf. 現在の天秤の精度は 10-10
2018/2019プランク定数 プランク定数の値を 6.62607015×10-34 J s とする。 1960 年代に Josephson 効果が発見され、1970 年代には Josephson 定数 KJ = 2e/h = 48597.9 GHz/V を電圧の標準に使えそうになってきた。 1980 年に量子ホール効果が発見され、von Klitzing 定数 RK = h/e2 25812.807 Ω を抵抗の標準に使えそうになってきた。 h = 4/(KJ2 RK) になるので、これらの2つの定数を仕事の標準に使えることになった。 この電気的な仕事率と重力による仕事を比べることができるキッブル・バランスが長年の努力で開発されて、 十分な精度でプランク定数を測定できるようになった。
さらに、「モルの定義」に必要なアボガドロ定数の測定値と矛盾がないことも確認された。
10-8

アンペアの定義の変遷

アンペアの定義背景など精度
1908化学現象硝酸銀水溶液中を通過する電気が 1 秒間当たり 0.001118000 グラムの銀を析出させる電流。 メートル法とは独立に定義されたもので、「国際アンペア」と呼ばれる。
19481 m 間隔の2本の平行直線導体を流れ、導体の長さ 1 m あたり 2×10-7 N の力を及ぼしあう電流。 真空の透磁率を 4π×10-7 N A-2 と定義したことに相当する。 10-6
2018/2019電気素量 電気素量の値を 1.602176634×10-19 C とする。 1960 年代に Josephson 効果が発見され、1970 年代には Josephson 定数 KJ = 2e/h = 48597.9 GHz/V を電圧の標準に使えそうになってきた。 1980 年に量子ホール効果が発見され、von Klitzing 定数 RK = h/e2 25812.807 Ω を抵抗の標準に使えそうになってきた。 e = 2/(KJ RK) になるので、1990 年以降、主要先進国では、これらの2つの定数を使って電気の標準にするようになってきた。 5×10-9

モルの定義の変遷

カンデラの定義背景など精度
1971炭素12 12 g の 12C の中に存在する原子の数と等しい数の要素粒子を含む形の物質量。 それ以前は酸素を基準にしていた。
2018/2019アボガドロ定数 アボガドロ定数の値を 6.02214076×1023 とする。 ロシアの核燃料施設の技術を利用して高純度の 28Si の塊を作れるようになった。 これを高精度の真球に加工し、その大きさと格子定数を測定し、その中の原子数を正確に測れるようになった。 一方、質量を天秤で正確に測り、別の手段で 28Si の質量を測ることで、アボガドロ数を精度良く 測定できるようになった。表面の酸化膜の影響は、表面分析をして評価し、除いてある。 10-8

ケルビンの定義の変遷

ケルビンの定義背景など精度
1967/68水の三重点水の三重点の熱力学的温度の 1/273.16。 補助的に温度定点や補間温度計が定められている (図5.12)。
2018/2019ボルツマン定数 ボルツマン定数の値を 1.3806490×10-23 J/K とする。 4×10-7

カンデラの定義の変遷

カンデラの定義背景など精度
1979放射強度周波数 540 THz(黄緑色)の単色放射を放出し、 所定の方向におけるその放射強度が 1/683 W/sr である光源のその方向における光度。 SI 系唯一の感覚量。人間の視覚が最も敏感な 540 THz (波長 555 nm) の黄緑色の光を基準にしている。 ほかの波長の光に関しては、人間の標準的な視感度曲線を元にして定められる。