また会う日まで

著者池澤夏樹
連載朝日新聞朝刊 2020/08/01--2022/01/31
読了2022/01/31
参考 web pagesブログ「羊と猫と私」あらすじが書かれている。

池澤夏樹の父方の祖父の兄である秋吉利雄のを主人公とした歴史小説である。秋吉は、海軍軍人ではあるが、水路部にいて海図作成に携わっていたので、 直接の戦場は経験せずに済んだ人で、むしろ学者肌の人だったようだ。ローソップ島(現在のミクロネシア連邦の島)における日食観測が、 人生のかなり大きなイベントとして描かれている。キリスト教信者であることと軍人であることとの相克が一つのテーマだが、 これは最後まで解決されない。

著者が連載後に書いている通り、これは歴史小説であり、

歴史小説ははじめから矛盾している。「歴史」としてなるべく史実に沿いながら「小説」としては精一杯の逸脱を図る。
という性質のものである。とくにMという人物の創作が最大の逸脱であったとのこと。 とはいえ、親族が多くの資料を持っていたらしく、かなり事実に基づいたものであるらしい。 これだけの資料があったということは、秋吉利雄(とその周辺の人々)はかなり筆まめだったのだと思われる。

秋吉の勤めた海軍水路部は、戦後、海上保安庁水路部となり、今は水路部の名前が無くなって 海上保安庁海洋情報部となっている。 地球物理学系の人もいるので、以前は私の面識のある人がいた(今はいない気がする)。

題名の「また会う日まで」は讃美歌の引用である。

神ともにいまして
ゆく道をまもり
天(あめ)の御糧(みかて)もて
力を与えませ
また会う日まで
また会う日まで
神の守り
汝(な)が身を離れざれ