旧統一教会というカルトの広告塔として死んだ安倍元首相が国葬になるという驚愕のニュースを聞き、故人の業績を振り返るために読んだ。 安倍と言えば、失政と腐敗と国会で汚い野次を飛ばす姿しか思い浮かばないのだが、果たして暗愚な宰相であったことを再確認した。 とはいえ、ここに書かれているように、問題は安倍個人というより「体制」である。彼は暗愚であるゆえに体制の奴隷となった。 岸田首相が安倍を国葬にすると決めたということは、岸田もまた体制の奴隷なのであろう。
ところで、安倍が頽落してしまった背景の考察は様々になされている。彼は基本的にノンポリのボンボンで、周囲の人が期待するように政治家を演じていた、 というような感じの考察や、彼の振る舞いは子供の頃の心の傷に基づくというような考察などは 的を射ているような気がする。統一教会との関係も含めて、岸信介の孫として生まれた悲劇の帰結かもしれない。 そう思って見ると、安倍外交が失敗した(第四章)けれども、海外から「評価されている」理由もわかる。 彼にはポリシーが無いので、八方美人を演じ、金もバラまいてきたということだ。
本書では、アベノミクスがうまくいかなかった理由も明快にまとめられている(第二章)。「三本の矢」そのものが 相互矛盾していてごった煮状態だった。アベノミクスがうまくいかないとわかるとバラマキっぽい政策に転換しておきながら、 首相を辞めてから「アベノミクス、変えるべきではない」 「社会主義的な味付けになっていくのではないかと取られると、市場も大変マイナスに反応する」 と言う。安倍は、自分の経済政策にかなり反自由主義的な要素が含まれることを自覚していないのか、平気で嘘を言っているのか、支離滅裂である。
国葬を記念して、本書を通じて安倍元首相の業績を振り返ることを薦めたい。