ハイデガー 存在と時間

著者戸谷 洋志
シリーズNHK 100分de名著 2022 年 4 月
発行所NHK 出版
電子書籍
刊行2022/04/01(発売:2022/03/25)
入手電子書籍書店 honto で購入
読了2022/04/30
参考 web pages著者 twitter

戸谷氏は、難解で知られる『存在と時間』に関して、存在論の方は放っておいて、「世人(せじん)」や「良心の呼び声」に 的を絞ることで、人間の生き方論として読むことで、わかりやすく解説している。 テーマを一言でいえば「みんなに流されず、自らの良心に耳を傾けて生きる生き方の勧め」である。 最終回を、ハイデガーのナチスへの加担を論じることに充てているのも好ましいと思う。 存在論の方は、ハイデガー本人でさえまとまらずに未完にしてしまった問題なので、少なくとも入門者向き解説では 排除するというのは正解であるように思える。現象学的なやり方が(私はよく理解していないとはいえ)今の時代に 意味があるかどうかさえ疑問である。

ハイデガーが面白いなと思うのは、無神論的な体裁を取りつつ、良心を持ち出すところが、 キリスト教っぽいなということである。ここの解説を読んでみての感想は、彼のナチスへの加担も、 根っからのキリスト教徒だったハイデガーが、表面的にキリスト教の装いを捨てたことに問題があったように思える。 つまり、彼にとって唯一の対話の相手だった神を捨てると、彼には孤立しか残らなくなったのではあるまいか。

「100分de名著」放送時のメモと放送テキストのサマリー

第1回 「存在」とは何か

今回の番組では、キーワードは「責任」。『存在と時間』はその問題を考える手掛かりになる。 一方で、ハイデガーは、ナチスに加担したことでも知られる「反面教師」でもある。 ハイデガーは、ナチ党に入党していた。

ハイデガーの前半生

『存在と時間』の問題提起

第2回 「不安」からの逃避

世人(せじん)

第3回 「本来性」を取り戻す

良心の呼び声 (Ruf)

存在

本来は、存在とは何かという問いに答えるはずだったが、『存在と時間』はそれを匂わせるところで終わってしまう。 ハイデガーの偉大な点は、未完成の著作でその後の哲学の方向を決めたこと。

第4回 『存在と時間』を超えて

ハイデガーのナチスへの加担

ハイデガー哲学とナチスへの加担との関係

『存在と時間』に欠けていること

ハイデガーは、本来性を取り戻した現存在がどのように他者と関わるべきかを明らかにすべきだった。