子供向けに書かれたゴリラの本だが、大人が読んでも十分に楽しめる。すぐに読めた。
ゴリラは魅力的だ。何よりゴリラは堂々としているし、おおむね平和的だ。 大型類人猿の代表格のゴリラとオランウータンは、基本的にはどちらも主として植物食で、いたって平和的な生活を送っている。 本書では、ゴリラの研究をすることでわかる、人間の生き方の特徴を解説してある。 ゴリラとニホンザル、アフリカの人々の生き方と日本人との対比も興味深い。
途中、魅力的なオスのゴリラのタイタスが登場する (pp.37,43-44,63-64)。著者が、ゴリラが 笑うことに気付いた初めてのゴリラだったそうだ。タイタスは、 BBC や Wikipedia でも取り上げられているマウンテンゴリラで、世界的に有名なゴリラだったようだ。 YouTube にまとめ記事 まである。それによると、タイタスの生涯は以下のような感じである。 3歳の時に伯父を密猟者に殺された。4歳の時に父親を密猟者に殺され、妹は他の雄に殺され、母親は別の群れに行ってしまい、 孤児になった。そこで雄の群れに入った。その群れにはやがて雌も入ってきた。18歳の時、群れのリーダーになった。 タイタスは仲裁の名人で、周囲から厚く信頼され、たくさんの子供を作った。 35歳で、息子との争いがもとで死んだ。
一方で、アフリカのようなところで活動すると、不条理もたくさんある。 ここでは、とくにルワンダ内戦とその影響のことが書かれている。ゴリラも大きな被害を受けた。 本当は些細なことまで入れると山のようにいろいろな問題を経験したのだろうと思うが、それは 書かれていない。