われら古細菌の末裔 微生物から見た生物の進化

著者二井 一禎(ふたい かずよし)
コーディネーター佐子 芳彦(さこ よしひこ)
シリーズ共立スマートセレクション 38
発行所共立出版
刊行2023/02/25(初版第1刷)
入手九大生協で購入
読了2023/08/09
参考 web pages出版社のページ

生命の初期進化に関する非常によくまとまった本である。研究の歴史もわかるし、 地球科学的側面にも目が行き届いている。著者は森林微生物学が御専門らしいが、 周辺の広い分野に造詣が深いのであろう。

歴史的なことで私が知らなかった主なことは (1) Carl Woese の3ドメイン説は最初は受け入れない研究者も 多かったということ (2) Lynn Margulis の連続細胞内共生説以前から細胞内共生説があって、記録にあるその最初の 提唱者は Andreas Schimper (1883 年) だということであった。素人からすると、Woese と Margulis の名前が有名なので、 その学説の背景を知らなかったのだが、いろいろ背景があることが分かった。

第5章の古細菌と真核生物の系統関係の話は、最近飛躍的に進歩している分野で、 1990 年代以降、次々に新しい古細菌のグループが見つかって、系統関係が次々に書き換えられていることが 本章を読むとわかる。さらに、この本がカバーしている 2020 年まで以降も重要な論文が出ているようである。

地球科学的なこともしっかり書かれているとはいえ、些細だが2点気になることがあった。

サマリー

第1章 すべては3ページの論文から始まった

第2章 初期生命としての微生物

第3章 大気環境を変えた微生物たち

第4章 真核生物への進化

第5章 われら古細菌の末裔