中江兆民 三酔人経綸問答

著者平田 オリザ
シリーズNHK 100分de名著 2023 年 12 月
発行所NHK 出版
電子書籍
刊行2023/12/01(発売:2023/11/25)
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読了2023/12/28

タイトルを日本史で習ったくらいしか知らない本である。「100 分 de 名著」の解説によると、 結局ごく当たり前の政治思想をわかりやすく説明してあるもののようだ。非武装中立の民主主義を 是とする「洋学紳士」と重武装侵略主義を是とする「豪傑君」が議論し、最後に「南海先生」が 中庸で現実的な考えでまとめるという作りである。これは今でもよくありそうな話である。 いわゆるウヨクもサヨクは同じくらい非現実的な主張をするのに対し、真っ当な主張は ずっと普通のことである。でも、第4回で紹介されている通り、「普遍の真理はみな陳腐だが、 行えば新奇」なのである。

「100分de名著」放送時のメモと放送テキストのサマリー

第1回 なぜ問答形式なのか

講師は大学では哲学を専攻したが、西田幾多郎がわからなかったのに対して、中江兆民はわかりやすかった。

『三酔人経綸問答』基本情報

はじまり

南海先生は大酒飲みで政治談議が大好きな現実主義者。ある日、南海先生のもとを二人の客が訪ねてきた。 一人は哲学者風な民主主義者・理想主義者(洋学紳士、紳士君)、もう一人は豪傑風な侵略主義者(豪傑君)。 三人は政治談議を始めた。

なぜ問答形式なのか

  1. 中江兆民は演劇が好きだった。戯曲の「三一致の法則」(時間・場所・行為が同一という形式)を取り入れた。
  2. 西洋哲学における「問答」の伝統。
  3. 日本語の問題。当時、難しい思想を日本語に落とし込むのには、話し言葉の方が良かったのではないか。 当時はちょうど言文一致が始まった時代。二葉亭四迷の『浮雲』も明治 20 年。 まだまだ自分の考えを散文で書くための言葉が無かった。

中江兆民の半生

土佐のリベラリズムはおおらか。

第2回 洋学紳士と豪傑君―理想主義と覇権主義の対話

洋学紳士と豪傑君の対話

欧米列強の魔の手が日本に及ぶかもしれないという時代、日本はいかにすべきか。

エンパシーと対話

シンパシーは同情。エンパシーは、相手の立場を理解する態度や技術。 エンパシーが『三酔人経綸問答』の対話がうまく成り立つポイント。

第3回 「現実主義」の可能性―南海先生の論を中心に

南海先生の語り

第4回 その後の兆民―『一年有半』『続一年有半』

中江兆民の後半生

『一年有半』

『続一年有半』

中江兆民の考えのまとめ