ヘーゲル 精神現象学

著者斎藤 幸平
シリーズNHK 100分de名著 2023 年 5 月
発行所NHK 出版
電子書籍
刊行2023/05/01(発売:2023/04/25)
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読了2023/05/25

自分で読もうとしても、言葉遣いがひねくれているのでとても読めたものではないヘーゲルを、 易しく解説してもらえるというありがたい企画である。ヘーゲルをこれだけ平易に解説してくれている本は貴重だ。 その結果、ヘーゲルが現代社会にもつながる問題を扱っていたのだということを初めて知った。

第1回で、科学の真理は間違いながら獲得してゆくものであるという科学における可謬主義の源がここにあることを学んだ。 さらに、主人と奴隷の思考実験の話は、現代における搾取の問題にもつながる。

第2回では、論破やディベートの弊害、相対主義の問題点といった現代でも問題になっていることが、 近代の始まりからずっと問題になっていることを学んだ。

第3回では、啓蒙と信仰の対立について学んだ。現代にまで続く対立ではあるが、科学の側が、 科学が見ているのは現実のごく一部だということを謙虚に認識し、宗教の側も、 宗教が人の心のすべてを支配できるわけではないと謙虚に認識すれば、本当は対立することではないと思うのだけれど。

第4回では、善悪の基準のようなことも、対立と反省とアウフヘーベンを繰り返しながら不断に改善してゆくものだと いうことを学んだ。当たり前と言えば当たり前だけれど、ヘーゲルと言えば絶対精神のような神の視点でものを 考える人だと思っていたので、実はそうではなくて普通のことを言っているのだと知って驚いた。

「100分de名著」放送時のメモと放送テキストのサマリー

第1回 奴隷の絶望の先に―「弁証法」と「承認」

背景

当時、フランスでは革命が勃発するなど、ヨーロッパは激動の時代だった。 伝統的な力が崩れていっていた。

ヘーゲルは古代ギリシャに憧れた。そこでは、既存の価値観の中で従うべきルールが決まっていた。 それは、美しく調和した幸せな社会だった。一方で、自由は無かった。これに対し、現代(ヘーゲルの時代)は 個人が自由なので、社会の調和がない。その自由と調和を両立するためにはどうしたら良いか? これに答えるため、ヘーゲルは『精神現象学』を書いた。

ヘーゲル略歴

弁証法

自立とアウフヘーベン

第2回 論破がもたらすもの―「疎外」と「教養」

精神 Geist

精神の歴史

論破したがる人

第3回 理性は薔薇で踊りだす―「啓蒙」と「信仰」

啓蒙と信仰

啓蒙の暴走と薔薇としての理性

第4回 それでも共に生きていく―「告白」と「赦し」

良心と相互承認