ロフティング ドリトル先生航海記

著者福岡 伸一
シリーズNHK 100分de名著 2024 年 10 月
発行所NHK 出版
電子書籍
刊行2024/10/01(発売:2024/09/25)
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読了2024/11/02

ドリトル先生シリーズは、子供の時に何冊か読んでいるはずだし、テレビドラマもあったような気がするのだが、 ほとんど覚えていない。でも、動物とお話ができるということでワクワクしたことは覚えている。

改めて解説を聞くと、子供の頃のワクワク感を微かに思い出す気がした。ドリトル先生が自然体で 動物たちと会話する姿に憧れたものである。

「100分de名著」放送時のメモと放送テキストのサマリー

第1回 ドリトル先生の「フェアネス」

「ドリトル先生」シリーズ

物語の進行と解説

物語の進行解説
  • パドルビーという水辺の町に靴屋の息子トミー・スタビンズが住んでいた。
  • ある日、大けがをしたリスを拾ったスタビンズくんは、ドリトル先生のところに行くように勧められる。 しかし、ドリトル先生は旅に出ているらしかった。
  • ある日、雨に降られて走り出すと、小柄な男性にぶつかった。彼こそがドリトル先生だった。
  • 舞台は 19 世紀前半のイギリス。
  • ドリトル先生は、ジェントリ。だが、人に接するときは、身分にかかわらずフェア(公平)。
  • ドリトル先生は、子供にも公平に接する。
  • ドリトル先生の家にはたくさんの動物がいた。アヒルのダブダブは家政婦。
  • ドリトル先生の荷物は少なかった。
  • ドリトル先生は、リスの往診にスタビンズくんの家に来てくれた。ドリトル先生は、フルートも吹いた。
  • ドリトル先生は、豚のガブガブを可愛がっているけれど、ソーセージやベーコンが好物。 ドリトル先生は自然体。
  • ドリトル先生は、階級のことは気にせず、スタビンズくんの家族と交流する。
  • スタビンズくんは、ドリトル先生の手伝いをするようになる。
  • スタビンズくんはオウムのポリネシアに「ぼくも動物のこどばが話せるようになるかな?」と尋ねる。 ポリネシアは、注意力が大事だと答える。
  • スタビンズくんはドリトル先生に博物学者になりたいと言った。

  • 注意深い観察者 ( a good noticer ) になることは、生物学者にも重要。
  • ドリトル先生における博物学者は、ありのままに自然の多様性を寿ぐ人。
  • ドリトル先生は、「斜めの関係」の大人。上下関係ではなく、抑圧的ではない。

第2回 「道のり」を楽しむ

物語の進行と解説

物語の進行解説
  • ドリトル先生とスタビンズくんは、世捨て人のルカに船員になってもらおうと思って、ルカを訪ねるが、ルカがいなかった。 ルカは、殺人容疑で捕まっていた。
  • 実際は殺人ではなく、不慮の事故だったが、それを見ていたのは飼い犬のボブだけだった。
  • ドリトル先生は、裁判所で裁判長の犬の言葉を翻訳してみせる。
  • ドリトル先生は、裁判長の鼻を明かす。
  • 航海に出るまでの紆余曲折がいろいろあって、なかなか航海に出ないところが面白い。
  • ルカは無罪放免になって妻と仲良く暮らせるようになったので、ドリトル先生は、ルカを船員にすることを諦める。
  • ムラサキゴクラクチョウのミランダがブラジルからやってくる。偉大な博物学者のロング・アローが、 クモサル島で消息を絶ったという。ドリトル先生たちは、クモサル島に行くことを決める。
  • ベン・ブッチャーが船員になることを申し出るが、ドリトル先生は断る。
  • ネコ肉屋のマシュー・マグもついて行きたがったが、リューマチ持ちで諦める。アフリカから来た留学生の バンポくんが船員に選ばれる。犬のジップ、オウムのポリネシア、サルのチーチーも一緒に行くことになる。
  • 船には密航者がいた。マシュー・マグがリューマチが悪化して発見された。次に、ルカと船酔いしたその妻が発見された。
  • ドリトル先生はペンザンスでその3人を降ろして、持っていたお金を全部渡した。
  • マシュー・マグも密航していて、塩漬けの肉をほとんど食べてしまっていた。
  • ドリトル先生は、無一文になっても楽天的。お金に無頓着で身軽な生き方をしている。 ドリトル先生は抜けているから、皆に助けてもらえる。
  • パドルビーは架空の町だが、ブリストルの近くにあって、ブリストルが一部モデルになっているようだ。
  • ドリトル先生は、カパブランカ諸島に立ち寄って、ベン・ブッチャーを降ろす。
  • 町では闘牛が行われていた。ドリトル先生は、闘牛が嫌いだった。
  • ドリトル先生は、自分が牛を上手に操ったら闘牛を止めることを島の有力者のドン・エンリケに約束させた。
  • ドリトル先生は、牛の上で逆立ちをしてみせた。さらに、5頭の牛を倒した。
  • ポリネシアたちは、闘牛で賭けをして、食料調達のための大金を稼いだ。
  • ドリトル先生は、前日に牛たちと打合せしていた。
  • 現実の世界でも、最近、闘牛を禁止する動きがある。ロフティングには、先見の明があった。 ドリトル先生は、食べるために動物を殺すことは認めているが、娯楽のために殺すことには反対だ。
  • ロフティングは、第一次世界大戦で、軍用馬が怪我をするとすぐに銃殺されるのを目にした。 そうならないためには、動物の言葉を理解する必要があるのではないかと思って、ドリトル先生のアイディアが生まれた。
  • ロフティングは、鉄道建設の設計技師だったこともあって、デザイン性の高い挿絵を描いた。
  • ドリトル先生のキャラクターには、多様性がある。

第3回 「ナチュラリスト」の条件

物語の進行と解説

物語の進行解説
  • ドリトル先生一行は、クモサル島を目指して、航海を続ける。
  • 突然の嵐で船が難破した。
  • 気が付くと、スタビンズくんは大海原で船の破片に乗って漂っていた。 彼は、イルカに導かれて、別の破片の上で漂流しているドリトル先生たちに再会した。 ドリトル先生は落ち着いていた。
  • ドリトル先生一行は、クモサル島に着く。
  • スタビンズくんは、漂流しながらもナチュラリストになりかかっている。
  • ドリトル先生は、ナチュラリストらしく、遭難しても落ち着いている。 自然は思い通りにならないことを良く弁えている。
  • ドリトル先生一行は、島の住民に威嚇されて、ジャングルに逃げる。
  • すると、珍しいジャビズリー・カブトムシが飛んできた。ドリトル先生は、帽子でそれを捕まえた。 そのカブトムシの脚には葉が結び付けられていた。そこにはロング・アローからのメッセージが絵で描かれていた。
  • ロング・アローは、ナチュラリストのドリトル先生ならジャビズリー・カブトムシを捕まえてくれるだろうと思って メッセージを送ったのだろう。
  • ドリトル先生は、カブトムシを放して、その後を追った。すると、カブトムシは岩の隙間に入っていった。
  • ドリトル先生たちは岩の下を掘り、岩をどかせた。すると、ロング・アローが現れた。いろいろな言葉を試すと、 ワシ語が通じることが分かった。ロング・アローたちは、薬効のあるコケを探していて、洞窟に閉じ込められたのだった。
  • ドリトル先生たちは、ロング・アローたちを救出したということで、村人たちに歓待された。
  • ロング・アローは、ドリトル先生にいろいろな薬草について教える。 西洋近代科学に対するアンチテーゼでもある。自然を収奪しない。
  • 講師も、機械論的な生物学を学んでいたが、やがて生物は機械ではないと認識するようになった。 それで「動的平衡」の生命観に至った。

第4回 小さな鞄ひとつで軽やかに生きる

物語の進行と解説

物語の進行解説
  • バグ・ジャグデラグ族がロング・アローの村を襲う。ドリトル先生たちはこれを迎え撃つ。 ポリネシアが連れてきたオウムの群れがバグ・ジャグデラグ族の耳を切り刻んで追い払った。
  • オウム和平条約が結ばれた。双方に不戦の誓いを立てさせた。
  • 生物界でも協力(共生)による進化が起こることがある。たとえば、ミトコンドリアの細胞内共生。
  • ドリトル先生は、島の酋長に選出される。名前もジョング・シンカロット(たくさん考える)に改めさせられる。
  • ドリトル先生は、シンカロット王として大活躍した。おかげで人々の生活は向上した。
  • ドリトル先生は、博物学がほとんどできなくなった。
  • ドリトルは Do Little(おさぼり)。それが Think-A-Lot(たくさん考える)になった。
  • 若い人はよく自分探しをするが、自分の中に答えはない。細胞は、初期には何にでもなりうる。周囲の状況で 役割分担が生まれる。生命は、このように本来的に風任せ。
  • ある日、大ガラス海カタツムリが現れる。怪我をしていた。ドリトル先生は、通訳を挟んで海カタツムリと会話し、治療をする。
  • 海カタツムリは、お礼にドリトル先生たちをバドルビーまで連れて行くと申し出る。 ロング・アローは、ドリトル先生たちが帰国することを了解する。ドリトル先生たちは、海カタツムリに乗って帰国する。
  • 旅を通してスタビンズくんは一回り成長する。「センス・オブ・ワンダー」が大切。
  • 悩める若者は旅に出ればよい。
  • 本書を読むと、自分の「センス・オブ・ワンダー」の原点が探り当てられる。