宮本常一 忘れられた日本人

著者畑中 章宏
シリーズNHK 100分de名著 2024 年 6 月
発行所NHK 出版
電子書籍
刊行2024/06/01(発売:2024/05/25)
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読了2024/07/01

宮本常一も名前しか知らなかった。が、この放送を通じて、昔の普通の田舎の人々がどうやって生きてきたかを 伝える重要な役割を果たした人だということが分かった。

第2回の「寄りあい」の話は興味深かった。集落で大事なことを決めるときは、皆で集まって、 全員が一致するまで延々話をして決める。話をするといっても、相手を論破しようとするのではなく、 過去の似た経験をみんなで話していくのである。これは、昔の良き自民党政治のやり方に通じるのでは ないかと思った。論理よりも昔の経験に頼るのは、保守の精神そのものだし、全員くたびれて 一致するまで話をするのは、民主主義の基本だと思う。非効率の極みだけど、 人間というものはそうでもしないと納得が得られないのではないかという気もしている。 民主主義は、論破でも多数決でもない。

第4回の「世間師」も面白かった。昔の田舎の人々は生涯同じ村にいるものだったかというと そんなこともなくて、移住をしたり、嫁入り前に都会で奉公してみたり、諸国放浪して世間を見てきて 故郷に体験を伝える人がいたりで、そこそこ移動があり、知識を更新していたということである。 今で言えば、海外に行ってみて見聞を広めることに相当するのだろう。日本にもそういう人が一定数いないと 世界から取り残されてしまう。

「100分de名著」放送時のメモと放送テキストのサマリー

第1回 もうひとつの民俗学

『忘れられた日本人』introduction

宮本常一の生い立ちと民俗学

第2回 伝統社会に秘められた知恵

「対馬にて」

「村の寄りあい」

「子供をさがす」

「女の世間」

昔の知恵を現代に生かす

第3回 無名の人が語りだす

今日のテーマは、名も無き人々の語りから日本人の過去を探ること。

「土佐源氏」

宮本の大阪での体験

「名倉談義」

第4回 「世間師」の思想

「世間師」とは、外の世間を渡り歩く人々のこと。

「梶田富五郎翁」

「女の世間」

「世間師(二)」

世間師としての宮本常一