ローティ 偶然性・アイロニー・連帯

著者朱 喜哲 (ちゅ ひちょる、Ju Heechul)
シリーズNHK 100分de名著 2024 年 2 月
発行所NHK 出版
電子書籍
刊行2024/02/01(発売:2024/01/25)
入手電子書籍書店 honto で購入
読了2024/03/02
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ローティの名前くらいは知っていたが、どういう哲学者かは知らなかった。 本解説で、ローティが、哲学者が陥りがちな「尖り過ぎ」を排してバランスを重視する哲学者だということが分かり、 そのうちゆっくり著書を読んでみたいという気になった。liberal を「残酷さを減らす」という意味だとしている ことも気に入った。自民党 ( = Liberal Democratic Party ) の議員や支持者が自分の党の名前に liberal が 入っていることを忘れているような発言をよくする今日この頃、益々重要なことである。もちろん、liberal は 多義的な言葉なので取り扱い注意ではある。いずれにせよ、ローティが、まさに現代の問題を取り上げている哲学者だということが分かった。

残酷さを減らすのに共感をはぐくむことが重要だ、という考えに類するものは、たしか以前にコンラート・ローレンツの著書 (どの本だったか忘れた)で読んだような気がする。戦争を減らすには、外国人と友達になることだというような 文脈だったと思う。ローレンツは 1903 年生まれ、ローティは 1931 年生まれと一世代違うけれど、どちらも 第二次世界大戦を経験した世代だから、似たような結論に至るのは不思議ではない。

講師は、実に明快にローティの解説をしている。さらに親切なことに ご自身の note で 番組のフォローをしているので、理解がもっと深まる。

「100分de名著」放送時のメモと放送テキストのサマリー

第1回 近代哲学を葬り去った男

リチャード・ローティ (1931-2007)

『哲学と自然の鏡』

新たな哲学の使命

『偶然性・アイロニー・連帯』

第一部の「偶然性」というのは、私たちも今の社会の在り方も偶然だという認識を持つべきだということ。 本質を探すという発想からは縁を切るべき。

第2回 「公私混同」はなぜ悪い?

ローティの主張のまとめ

アイロニスト ironist

公共的正義と私的な関心

ローティの生い立ちと思想

現代の課題:間違ったことを喋れる場所をどうやって作るか?私的な空間やボキャブラリーをどう確保するか?

第3回 言語は虐殺さえ引き起こす

言語の危険性

第4回 共感によって「われわれ」を拡張せよ!

文学で感覚を高める

自分の内側にある残酷さに目を向ける文学

われわれの拡張