アジアを中心にした世界史講座ということで新鮮に楽しめた。アジアを中心にすることで、 モンゴルをはじめとする北方遊牧民族が多くの場面で主人公になっているのが特徴であった。
以下、印象に残っていることをいくつか:
- 気候が寒冷化すると、世界が乱れる。3~5世紀にはユーラシア中央部が寒冷化した。 そのため、ユーラシア東部では華北に遊牧民族が南下してきて、4世紀には五胡十六国の混乱時代になる。 5世紀に鮮卑族が華北を統一して北魏を建国する。ユーラシア西部では、4世紀中ごろからフン族が西方に 移動してきたのをきっかけに、玉突き方式でゲルマン民族がローマ帝国に侵入した。 4世紀終わりにローマ帝国が東西に分裂して、5世紀に西ローマ帝国が滅亡した。
- 14 世紀には小氷期の始まりの寒冷化が起こった。世界的に飢饉や疫病が起きたため、中国では元が経済的に 破綻して、モンゴルは北方に退却。14世紀半ばに明が建国される。ヨーロッパでは、ペストが大流行し、 それと並行してルネサンスの時代になる。
- 中国の中原は北方の遊牧民族が支配している期間がかなりある。北魏(鮮卑族、5世紀~6世紀前半)、 隋(鮮卑系?、6世紀末)、唐(鮮卑系?、7~9世紀)、金(女真族、12世紀~13世紀初め)、 元(モンゴル、13~14世紀)、清(女真族、17~19世紀)。ついでに言えば、16~19世紀にインドを支配した ムガル朝もモンゴル帝国の末裔である。
- ヨーロッパでは、17 世紀ごろに宗教的権威とは離れた主権国家が生まれ、18 世紀終わりのフランス革命を経て 国民国家の時代となる。現在世界のスタンダードとなっている国民国家やナショナリズムの概念の歴史は新しい。
- 国民国家がヨーロッパの帝国主義を支える。ヨーロッパの帝国主義とそれ以前のユーラシアの帝国とは異なる。 モンゴル帝国などの昔のアジアの帝国は、多くの民族や宗教を包含する緩い統治を行っていた。
- 第一次世界大戦後の一時的な平和を崩壊させたのは、日本が起こした満州事変である。