Durkheim の名前は聞いたことはあったけれど、何も読んだことはなかった。『社会分業論』は 近代の分業社会の中で、分業ゆえの相互依存関係を通じた連帯の可能性を論じた本ということであった。
書名 De la division du travail social の division は、「分断」とも訳すことができる。 本書のテーマは、分業を通じた「連帯」なのだが、分業が「分断」ともつながってしまう のが近現代社会の問題なのだろう。
解説を聞いていると、Durkheim の社会学は、科学者社会のありかたを考える基礎でもある感じがして、 けっこう身につまされた。科学者社会は競争社会であると同時に連帯も必要な社会で、そのバランスが難しい。 個人の創造性が高く評価される一方で、個人の能力には限界があって、共同で研究することも必要である。 それらのバランスを取るのは、そう容易なことではない。