絵本スペシャル

著者宮崎 哲弥・ヤマザキマリ・サヘル ローズ・若松 英輔
シリーズNHK 100分de名著 2026 年 3 月
発行所NHK 出版
電子書籍
刊行2026/03/01(発売:2026/02/25)
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読了2026/03/28

春休みの絵本特集。紹介されているのは、どれも知らない絵本であった。

第1回は、宮崎哲弥が『100万回生きたねこ』を紹介する。 輪廻とそこからの解脱の現代風解釈と言っても良いような内容である。 主人公の猫は、飼い猫として生と死を100万回繰り返していたのだが、 最後に1回自由に生きることができた後に、もはや生き返らなくなる。 猫は悟りを開いたわけではないが、初めてのびのびとした猫らしい生を全うしたとき、輪廻から外れる。 爽やかな解脱と言って良いのではないだろうか。

第2回は、ヤマザキマリが自ら訳した『だれのせい?』を紹介する。 自分の悪気のない行為が巡り巡って自分を含んだ多くの人に害をもたらすという ある種の因果応報が描かれている。最初の原因となる行為をしたクマは素直に反省して、罪を償う。 その素直さが、伸びやかな読後感に結びつく。

第3回は、サヘル・ローズが『ぼくのこえがきこえますか』を紹介する。 トランプ大統領やネタニヤフ首相といったキチガイ指導者のおかげで、世界中で多くの命が失われている中、 心に染みる。戦争反対というとお花畑だと言ってバカにして偉ぶる人が良くいるけれど、そういった人々こそ 戦争のリアリティを無視するという形でお花畑に住んでいる阿呆である。

第4回は、若松英輔が『おおきな木』を紹介する。 もらい続ける少年と与え続ける木の物語。幸福とは何かということについて考えさせてくれる。

「100分de名著」放送時のメモと放送テキストのサマリー

第1回 輪廻する「とらねこ」が解放されるまで―『100万回生きたねこ』

講師:宮崎 哲弥(評論家)

取り上げる絵本:佐野 洋子(作・絵)『100万回生きたねこ』(1977)

あらすじ

主人公は、100万回輪廻する「とらねこ」である。様々な飼い主の猫として生きてきたが、 不幸な生と死の繰り返しだった。飼い主に可愛がられていなかったわけではないが、猫は幸せではなかった。 結局、猫は誰かの所有物でしかなかった。猫は、死ぬのも平気だった。ところが、 100万1回目の生で野良猫になり自由に生きることができるようになった。 猫は一匹の白いメス猫と出会い、深く愛し合う。子供もたくさん生まれた。 やがて、白い猫はおばあさんになって死んだ。猫は泣き続けて息絶えた。 それで死んだあとは二度と輪廻しなかった。

解説

第2回 寓話に込められた希望―『だれのせい?』

講師:ヤマザキマリ(漫画家・文筆家)

取り上げる絵本:ダビデ・カリ(作)、レジーナ・ルック・トゥーンペレ(絵)『だれのせい?』(2022)

あらすじ

昔、クマの兵士がいた。手あたり次第のものを、剣で切っていた。 ある日、森中の木を切ってしまったところ、ダムから急に水が流れてきて、クマの砦が壊れてしまう。 クマは犯人探しを始める。ダムの門番のアリクイに聞くと、突進してきたバビルサのせいだという。 バビルサの尻には矢が刺さっており、突進したのはその矢を放ったキツネのせいだという。 キツネに聞くと、矢を放ったのは鳥たちが自分の果物を奪ったせいだという。 鳥たちに聞くと、キツネの果物を奪ったのは森の木が切り倒されたせいだという。 クマは、それが自分の過ちだったと気付いた。 クマは、罪滅ぼしをする。アリクイには盾をやり、バビルサには矢を抜いてやり、キツネには果物をやり、 鳥たちには木を植えて、さらに巣を作るための家を作ってやった。

裏表紙には「すべては思っていた通り、とはいきません」と書かれている。 原文は、Non tutto è come sembra で、直訳すると、 「すべてが見た目通りというわけではありません」という意味。

解説

第3回 沈黙に耳を澄まして―『ぼくのこえがきこえますか』

講師:サヘル・ローズ(俳優・タレント)

講師は、イラン・イラク戦争で戦争孤児となり、8歳で育ての母とともに来日した。 貧困や紛争に苦しむ人々への支援を行っている。

取り上げる絵本:田島 征三(作)『ぼくのこえがきこえますか』(2012)

あらすじ

僕は、皆に励まされて戦争に行った。母さんだけが泣いていた。僕は、砲弾に当たって飛び散った。 僕は魂になって、悲しみに暮れる母さんの姿を見る。復讐に燃える弟も戦地に赴く。 誰のために戦うのか?死者たちが魂になって昇ってくる。弟も死んだ。母さんの悲しみが見える。 「ぼくのこえがきこえますか」

解説

第4回 しあわせとは何か―『おおきな木』

講師:若松 英輔(批評家・随筆家・詩人)

取り上げる絵本:シェル・シルヴァスタイン(作)『おおきな木 (The Giving Tree) 』(1964)

あらすじ

ある一本の木があって、その木はある少年のことが大好きだった。少年はその木が大好きだった。 木は幸せだった。少年は若者に成長した。すると少年は「お金を頂戴」と言うようになった。 木は、リンゴを持って行って町でお売りなさいと言った。少年はリンゴを集めると、姿を消した。 長い時間がたって大人になった少年がまたやってきた。少年は「家が欲しい」と言った。 木は、自分の枝を切って持っていくように言った。少年は枝を切り落として持って行った。 長い月日の後、老いた少年がやってきて船が欲しいと言った。木は、幹を切って船を作りなさいと言った。 少年は、幹を切り落とした。さらに時がたって、すっかり年老いた少年が戻ってきた。 木にはもはやあげられるものは無かった。少年は腰を下ろして休める静かな場所を求めた。 木は、切り株の上にお座りなさいと言った。少年はそこに腰を下ろした。それで木は幸せだった。

解説