ことがらが主語になる文を日本語に直訳すると、いわゆるバタ臭い日本語に
なることがある。そういうときは、「(主語)によって、〜になる」という感じで
訳すとうまくいく。逆に日本語を英語に直すときも「A によって、」
を by A とか by using A と訳すのではなく、
A を主語にすることを考えると良い。
[例]
These observations prompted questions concerning the relative
importance of discrete versus diffuse venting and mechanisms of
focusing upflow into discrete vents.
[Lowell et al. (1995) JGR vol.100, 327-352, p.334]
「(化学)組成」という頻出語なのだが、どういうわけかふつうの英和辞典に
「組成」という訳語が載っていないことが多いので、
「構成」なんて訳してくれる学生が多い。chemical composition といえば
「化学組成」であることがはっきりするが、わざわざ chemical を付けない
ことの方が多い。
[例]
The great isotopic geochemist Willi Dansgaard analyzed the yearly
average isotopic composition of precipitation at a great
number of sites around the world with known temperatures.
[Alley The Two-Mile Time Machine p.63]
This work was part of the NOAA Trans-Atlantic Geotraverse project
to establish a standard crustal section across the central
North Atlantic. [Lowell et al. (1995) JGR vol.100, 327-352, p.330]
Implicit in this relation is the assumption that plane sections
of the plate remain plane. [Turcotte and Schubert
Geodynamics 2nd ed. p.115]
この関係式で暗に仮定されていることは、板の平面断面は平面のままだ
ということである。
動詞編
allow
辞書に最初に出てくるのは「許す」だが、
科学英語で重要なのはその意味ではない。重要なのは、
A allows B (名詞) とか A allows us to B (動詞) で
「A を使うと B できるようになる」という意味になる用法である。
ことがらが主語になるので、直訳すると
うまくいかない。「A によって B できるようになる」という具合に訳すのがコツ。
逆に日本語を英語に訳すときも、We can B (動詞) by using A. みたいに
書くのではなく、allow をうまく使えるようになると、英語らしくなる。
[例]
Helium anomalies found in waters sampled on the Alvin cruise
above the vent fields were correlated with temperature, thus
allowing the first estimate of convective heat loss
apart from that provided by conductive heat flow anomalies.
[Lowell et al. (1995) JGR vol.100, 327-352, p.331]
論理的な前後関係を表す場合。たとえば It follows that...
「そのことから ... がわかる」「したがって ...」は
良く使われる表現である。
時間的な前後関係を表す場合。A follows B は、B が先で
A が後である。B が省略され(その前の文を受けているような場合)、
自動詞として使われることもある。
の2通りが良く使われる。
[例]
Heat flow and near-bottom water temperature measurements
followed in the summer of 1972.
[Lowell et al. (1995) JGR vol.100, 327-352, p.330]
それに引き続いて、1972 年の夏に熱流量と海底付近の水温測定が
行われた。
refer to A as B
refer to は、辞書にはまず「言及する」と書いてあるので、訳すのに苦労する学生も
いるのだが、上の形では単純に「A を B と呼ぶ」でよい。call A B よりも
堅い言葉遣いである。
[例]
The remaining 10 percent, which geologists refer to as
the nondipole field, has a more complex structure.
[Grotzinger, Jordan, Press, Siever Understanding Earth 5th ed.
p.339]
地球科学者が非双極子磁場と呼ぶ残りの10%の部分の構造はもっと複雑である。
require
ことがらが主語になることが多い動詞で、その場合、A requires B は、
「A とすれば B でなければならない」「A なので B でなければならない」という感じの
条件とその必然的帰結を表す文として訳すのが良い。
[例]
Natural convection requires that
the inner core is unstably stratified.
[Deguen (2012) EPSL vol.333-334, 211-225, p.217]
自然対流が起こっているとすれば、内核の密度成層は不安定でなければならない。
前置詞編
in
「〜の中に(で)」という意味は基本としても、注意を要するのは、
「〜の(変化、変動)」、たとえば changes in sth といった感じで
使われる場合だ。英語を書く場合も、こういうときは in を使うことが
多いことに注意する。
[例]
Diffuse flow is measured as relatively small anomalies in
near-bottom water temperature.
[Lowell et al. (1995) JGR vol.100, 327-352, p.334 を改変]
diffuse flow は、海底付近の水温の比較的小さなアノマリ
として観測される。
似たようなことだが、「〜の違い difference in sth」
「〜の類似性 similarity in sth」も in を使うことに注意しよう。
[例]
The similarity in shape between the west coast of Africa
and the east coast of South America was noted as early as 1620 by
Francis bacon.
[Turcotte and Schubert Geodynamics 2nd ed. p.3]
アフリカの西海岸と南米の東海岸の形が似ているということには、
早くも 1620 年に Francis Bacon が気づいていた。
The reason for this difference in elevation is
the difference in the thickness of the crust.
[Turcotte and Schubert Geodynamics 2nd ed. p.2]
These observations prompted questions concerning the relative
importance of discrete versus diffuse venting and mechanisms of
focusing upflow into discrete vents.
[Lowell et al. (1995) JGR vol.100, 327-352, p.334]
もちろん、Note that ... は、文字通り「〜であることに注意せよ」と訳す方が良い場合もある
したがって、
It follows that ...
動詞編 follow の項も参照
接続詞編
because
訳すときには何も問題がないのだが、作文をさせると I am fat. Because I eat a lot.
みたいな感じで Because を文頭に持ってきて because 節だけで終わってしまう文を
書いてしまう人がけっこういる。because は従位接続詞なので、原則として主節が必要で、
I am fat, because I eat a lot. でなければならない。この間違いが多い理由は、
おそらく (1) 「なぜなら」= because だと思ってしまうことと (2) because を
最初に習うのが、Why are you fat? の答えとして Because I eat a lot. と言うという
文脈であるせいだろう。(2) は、会話で主節が自明なので省略されているだけである。
The reasons for this range are not entirely clear, nor is
the relationship between vent temperature and temperatures of
the rock and fluid at depth
[Lowell et al. (1995) JGR vol.100, 327-352, p.334]