「地球惑星科学セミナーI」吉田担当分シラバス


基本情報

テーマ
調べて書く
曜日と時間
木曜2限 (10:40-12:10)
1限に理系教養の講義があるので、10 分遅らさせてもらうとうれしい。
場所
E141 号室
セミナー日程
10/13,20,27 の3回
セミナー内容と目的
目的は、テーマの通り「調べる」能力と「書く」能力の向上にあります。 調べて書くことは研究を行う上でも基礎的な能力だし、社会に出ても 役に立つはずです。研究ならば、これに「新しいことを生み出す」 能力が加わりますが、とりあえずは調べて書くだけでも苦労します。 「調べて書く」というだけだと、これまでもいろいろなレポートで やっているとは思いますが、これまでと違ってプロフェッショナルに近い やりかたのものを要求します。根拠をしっかり示しながら、論理的に わかりやすくまとめることが重要です。
本セミナーでは、こちらから漠然とした題を提示しますから、 それに関して3回にわたって興味のある方向で毎回いろいろ調べてきて 書いてください。セミナーの時にはその出来具合いを評価し、 その次の回に更なる充実を図ります。気持としてはそれで1回分の 講義ノートに相当する程度のものを書いてください。
担当教員
吉田茂生(居室:E121, 内線:4580, e-mail:yoshida@eps.nagoya-u.ac.jp)
担当 TA
堀久美子(居室:E125, 内線:3014, e-mail:hori@eps.nagoya-u.ac.jp)
評価の方法
毎回書いたものが「調べた内容」と「書き方」によって評価されます。

セミナーの進め方

今日、セミナーのお題を3つ提示します。
  1. 地球内部の元素の存在度
  2. 地球内部の温度分布
  3. 地球内部の粘性
どれかのお題を選んで、3名ずつ2グループになるようにしてください。 3名のグループで調べていくことになります。毎回、責任者を1人ずつ 決めて、3回で全員回るようにしてください。その責任者が1人ででも 良いし、3人に分担しても良いから、各回調べてきたことを書いて 発表してください。

書いたものはセミナーの前日の水曜日の昼までにメールで提出してください。 フォーマットはテキストファイル、html、LaTeX、Microsoft Word、pdf のいずれかで提出してください(グループの3人で相談して、グループ毎に どれかに決めてください)。ただし、図をメールで送るのが難しいときは、 図はコピーを提出して下さい。

セミナーでは書いたものを見ながら品評会を行い、 その次の回までに何をすればより充実するかを一緒に考えます。

成果は私の講義のホームページ http://epp.eps.nagoya-u.ac.jp/~yoshida/japanese/lecture/3-seminar/index.html からたどれるところに置きます。

お題のきっかけとしての教科書

とりあえずの注意:表 1-1 のコンドライトモデルはたぶん数字を 書き間違えているので、元素組成を選んだ場合は計算し直しましょう (それもレポートの題材として適当)。

調べ方

きっかけとなる教科書のコピーを渡すので、それを出発点にして、 調べてください。教科書をちょっと読んだだけだとフムフムそんなものか、 と思うでしょうが、その根拠を問い始めると、たちまち山ほど疑問が 湧くはずです。あるいは、関連する事柄に考えを向けると、これまた 山ほど疑問が湧くはずです。それを調べてください。

疑問の例

元素存在度の根拠に関する問い
この元素組成はどのような観測事実に基づいて求められたのか?
この元素組成の誤差はどれくらいか?
元素存在度に関連する事柄に関する問い
元素は地球の中でどのように分布しているのか?
このような元素存在度はどのようにして形成したのか?
温度分布の根拠に関する問い
この温度分布はどのようにして求められたのか?
境界層とは何か?
温度分布に関連する事柄に関する問い
温度はどのようなことに影響を与えるのか?
この温度分布はどのようにして形成したのか?
粘性の根拠に関する問い
固体の粘性とはそもそも何であるのか?
(1-15) 式の根拠
粘性に関連する事柄に関する問い
図 1-10 の詳しい求め方
(1-13) 式の根拠
こういった問いの何か好きなものを適当に選んで解決に向けて努力してください。 地球内部の元素存在度や温度分布や粘性は、そもそも真の解が今でも わかっていない問題です。ですから、いろいろな考え方があるんだというところを わかってもらうと良いと思います。

どうやって調べるか

図書室・図書館や本屋で手当たり次第に調べる。
中央図書館だけでなく、地球惑星科学科図書室や他の部局の図書室も 活用しましょう。どこに何があるかは、中央図書館ホームページの OPAC を使って調べてください。手がかりとしてとくに参考になるのは、 教科書類(例:岩波講座 地球惑星科学)、専門事典類(例:Treatise on Geochemistry)です。
参考文献から引いて調べる
専門の教科書には元となった文献が引用してあります。それを孫引きして 調べます。引用から文献にたどり着く方法は、図書室と電子ジャーナルの 使い方を説明します。
最近では doi (digital object identifier) から元の文献をたどる必要も ある。http://www.doi.org/ を用いる。
論文検索
キーワードから文献を調べるのは、中央図書館ホームページ からたどれる Web of Knowledge, Web of Science, ScienceDirect などを使ってください。
インターネット検索
google, goo, yahoo などの検索エンジンで調べます。ただし、 インターネットの情報は玉石混淆なので、「石」をつかまないように 注意しましょう。
専門家や先輩に尋ねる
何事も先達はあらまほしきことなり。
日本語の本だけでは、たいていすぐに不十分になるので、英語の本や文献を 読まないといけない羽目にもなるでしょう。そのときはけっこう大変では ありますが、それを部分的にでも良いから読んでください。どの部分を 読んだら良いかすぐにわからないときは相談して下さい。

実際にどういう調べ方が主になるかは、「疑問」の種類によります。 重要な参考文献を見つけた場合は、それを3回にわたって読んで終わりと いうことになるかもしれません。あるいは、自分で少し計算をしてみることが 主になるかもしれません。あるいは、本やインターネットを手当たり次第に 見てみるというやりかたになるかもしれません。ただ、私が出したような テーマだと、あまり手当たり次第という形ではなく、何かひとつのことに 集中することになりやすいはずです。

書き方

書いたものは、大学3年生向けの教科書の一つの節になるように、 いいかえれば、大学3年生の知識で見たときに、それだけで一応 すべてわかってもらえるような形で書いてください。 毎回書き足していって、3回で講義1回分程度の内容になることを目指します。

文章法で大切なこと

3回やっているうちに最初のお題から少しずつずれているくることもあるでしょう。 そのときは、毎回毎回題名から変えていって、毎回それなりにひとまとまりに なるように努力しましょう。

調べるのに使った文献や URL のリストは文章の最後に必ず付けてください (証拠を読んだ人が誰でもたどれるように書くことは基本的に大切)。 とくに重要なものは、そのコピーも提出してください(電子ファイルならば メールでも良い)。

文章法で参考になる本