「地球惑星物理学基礎III電磁気学」シラバス
基本情報
- 曜日と時間
- 水曜2限 (10:30-12:00)
- 講義日程
- 今のところ、全学的な休講日以外に休講を予定しているのは、11/19
です。その場合は、全部で 13 回の講義があります。なお、休講の予定は
変わる可能性もあるので、その都度注意してください。場合によっては、
補講の可能性もあります。
- 講義内容
- 本講義では、電磁気学の基礎を学びます。
できれば、地球科学への応用まで解説したいのですが、
時間がないので、それはさわり程度になります。
- 講義の目的
- 目的は2つあります。
- 一つ目は、電磁気学が地球科学に登場する場面があるので、
その基礎を学んでおこうというものです。
電磁気学は、地球科学においてはそれほどあからさまに出てこない
ようでありながら、実は暗にいろいろなところで出てきています。
たとえば、偏光顕微鏡観察やリモートセンシングは電磁波を利用しています。
地球の物質が固まって存在しているのは電気の力のおかげです。
空が青い理由を理解するのには、電磁気学のけっこう深い理解が必要です。
- 二つ目は、電磁気学には、将来とくに地球物理のいろいろな
場面で役に立つ数学の道具がたくさんでてきます。それを学ぶのも
重要なことです。
- 担当
- 吉田茂生(居室:E162(10月中旬まで), E121(10月中旬以降),
内線:4580, e-mail:yoshida@eps.nagoya-u.ac.jp)
- 単位数
- 2単位
- 評価の方法
- 出席と毎週のレポート(宿題)を元に決めます。試験は行いません。
出席は1回10点に換算し(遅刻早退は減点)、レポートは
問題によりますが、だいたい1題10点満点で採点します。
その合計点を元に評価します。だいたいの目安は、8割以上が優、
6割以上が良、4割以上が可、4割以下が不可、です。
結果として、だいたい出席とレポートを1:2くらいの割合で
見ることになります。ただし、授業態度なども加味しますし、
基準は、年によっても多少は動かします。
しかし、このように、基本的には毎週の出席とレポートで
評価するので、ふだんさぼっておいて講義の最後になって
何とかして下さいというのは認められません。
特例として、すでに電磁気学の知識が十分にある者は、
受講しなくても優を付けます。第1回目に私に申し出て下さい。
十分な知識があるかどうか口頭試験をします。
- レポート(宿題)
- 毎回、練習問題を出します。翌週の月曜日までに解いて、
レポートを作成し、E162 号室(10月中旬より E121号室)の前の
かご(箱)に入れておいてください。
レポートということは、問題に対して、単に最終的な答えが
合っていれば良いということではなく、解く過程や論理の流れや書き方も
評価の対象になります。また、提出期限に遅れたものは減点とします。
また、レポートには、講義に対する質問や要望も適宜書いて下さい。
もっとも、疑問はその場で解決する方が良いので、質問は
講義時間内にしてくれた方が望ましいのではありますが。
講義の内容
講義の状況に応じて変わる可能性もありますが、だいたい以下の通りです。
1年生で電磁気学を学んだ人とそうでない人といることを考慮して、
以下の方針で組み立てられています。
- 内容的には、基礎的なことを中心に電磁気学を一通り網羅するようにします。
過去の自分の経験から言っても、電磁気学はなかなかわかりにくいので、
1年生ですでに学んでいても、もう一度復習するのは有益だと考えています。
- 1年生ですでに学んだ人がいるので、初等的教科書で良くある
クーロンの法則から始めるという順番を取らず、
むしろ基礎方程式系から出発して、電磁気学全体の構造が見えやすいような
順番で講義をします。2回目に学ぶ場合はそのやり方がはっきり良いと
思いますし、初めての場合も、スタートの敷居が少し高いことを除けば、
わかりやすいと思っています。
- 基礎的な数学の解説を比較的多く取り入れたいと思っています。
将来電磁気学を使わない場合も役に立つと思っているからです。
Part1 力と電磁場
- 登場人物紹介
電荷、電流、電場、磁場
- 電荷と電流にはたらく力
- 電磁場中の電荷の運動
粒子の運動方程式、常微分方程式の基礎
Part2 電磁場の変化の法則
- マクスウェル方程式
電磁場の変化の基礎方程式、電磁気学の単位系、ベクトル解析の基礎
- ベクトルポテンシャル、スカラーポテンシャル
- 簡単な静電磁場
点電荷が作る電場、線電流が作る磁場、電気双極子、磁気双極子
- 電磁波
電磁波の方程式と簡単な解, Fourier 変換
Part3 電磁場と物質の相互作用
- 導体:オームの法則
- 誘電体
- 磁性体
参考書
今年は教科書を指定していません。本講義にぴったりのものが
あまりないので、とくにこれを、というのを指定するのはやめました。
以下に、参考までに教科書ガイドをしておきます。
電磁気学の教科書はたくさん出版されています。
本講義は基礎的なことしかやらないので、どれを参考にしても良いと思います。
参考までに、以下に、代表的なものを挙げておきます。
○がついているのは、私が持っているものです。
そうでないものは持っていないので、論評はあてにならないところがあります。
- 初級者向け
- 物理学スーパーラーニングシリーズ(シュプリンガーフェアラーク東京)
- 佐川弘幸・本間道雄「電磁気学」○
- 基礎的なことが網羅されていて、かつ分かり易いと思います。
説明もスタンダードなのですが、少しもの足りないし、
気に入らない点もあります。
- 岩波物理入門コース
- 長岡洋介「電磁気学 I, II」
- 基本的な事柄だけを選んでコンパクトに書いてあります。
- バークレー物理学コース(丸善)
- 「電磁気学 上下」
- 基本的な事柄をていねいに書いてあります。
- 朝倉書店 基礎の物理
- 永田一清「電磁気学」
- 清水忠雄「電磁波の物理」○
- 永田著のものは、基礎的なスタンダードなもの。
清水著の方は、すでに電磁気学の基礎を知っている人が、
電磁波について学ぶ本。こちらは中級者向け。
私は、学部の3年生の時にこの教科書を元にした講議を
清水先生本人から受けました。物理屋向けとしては
スタンダードと言えますが、地球科学屋としては、
必要な事柄が入っていない部分があります。
- 標準的教科書(中級者向け)
- 岩波基礎物理コース
- 川村清「電磁気学」
- 中山正敏「物質の電磁気学」
- 標準的な教科書のようです。
- 培風館 新物理学シリーズ
- 平川浩正「電磁気学」○
- 平川浩正「電気力学」
- 電磁気学の方は、私が学部3年生の時の講議で指定されました。
いろいろなことがコンパクトに書かれていて、薄い割に
充実しています。ただ、電磁気学全体の構造がちょっと
見にくくなっている意味があります。電気力学の方は
電磁波関連。
- 砂川重信「理論電磁気学」(紀伊国屋書店)○
- 私が持っているのは第2版で、現在出ているのは第3版。
スタンダードに王道を行っているという感じで、
昔から定評があります。
- ジャクソン「電磁気学 上下」(吉岡書店)○
- 世界的に電磁気学の教科書の決定版といわれているものです。
現在第3版がでています。前半が SI 単位系、後半が
Gauss 単位系。網羅的に何でも書いてあります。
- パノフスキー・フィリップス「電磁気学 上下」(吉岡書店)
- これも標準的な教科書のようです。
- 個性的な教科書、上級者向けの教科書
- ファインマン物理学(岩波書店)
- 「III 電磁気学」○
- 「IV 電磁波と物性」
- 電磁気学の方は、私が1年生の時の講議で指定されました。
初級者向けですが、上級者にも役に立ちます。
物理的なイメージが明確に書かれていて、わかりやすいです。
物理的なイメージが分からなくなったら、この本を見ると
答えが書いてあります。そういう点が、上級者にも役に立ちます。
ただ、あまり例題は出ていないので、問題を解くのには
あまり役に立ちません。
- ランダウ・リフシッツ理論物理学教程(東京図書)
- 「場の古典論」○
- 「電磁気学 1,2」
- ファインマンとは対照的に、ひどく簡潔な言葉でかなり高級な
ことまで盛り込んである本。上級者向き。ランダウの教科書は
物理学科の人々にはカリスマ的な人気があります。たぶん
ちょっと禅問答的で格好良いせいだと思います。
- 丸善物理学基礎コース
- 太田浩一「電磁気学 I, II」○
- 最近出た教科書で、歴史的なことにも注意を払っていて、
内容に深みがあります。基礎的なことからはじまって、
微分形式を用いた定式化、解析力学、量子論まで
現代的な書き方で書かれています。D, H を使わず、
E, B のみを使うべきだという主張で一貫しています。
- 牟田泰三「電磁力学」(岩波書店)
- 電磁気学を一回勉強した人が、骨組みを復習して、
ゲージ場の理論にいたる構造を知るための本。
- 今井功「電磁気学を考える」(サイエンス社)○
- 著者は流体力学の大家で、流体力学を勉強したことが
ある人には分かりやすい形式で書いてある独特の教科書。
電磁気学と流体力学を勉強した人が、まさに電磁気学を
考えるのに良い本。ただし、誘電体、磁性体の取扱いには問題
があると思います。