徳山ダム建設 反対派の意見について

                                 佐々木大祐

 

徳山ダム・・・揖斐川の最上流部に計画されている

             貯水容量6億6千万トンの日本最大規模のダム

 

    徳山ダムの計画当初の目的

@     洪水調節・・・台風や梅雨の大雨の時、ダムに川の水をためて下流の洪水を防ぐ。

A     流水の正常な機能の維持・・・雨が多いときにはダムに水をため少ないときには           

              放流して川の流れを安定させる。

B     新規利水・・・ダムにためた水を放流して、新たに生活用水や工業用水を生む。

C     発電・・・一般家庭で約13万戸分に相当する使用量(40万kW)を発電。

 

 

    洪水調節に役立つのか?

○建設省の説明

ダム地点の計画高水量1920トンのうち毎秒1720トンをダムで調節し洪水のピーク時でも下流には毎秒200トンだけが流されるので洪水被害の削減を図ることができる。

 

しかし、

     中下流域での集中豪雨の場合、最上流部での洪水調節がどれだけの効果を持つか不明。乱開発の禁止、土地利用の適正化、遊水地の確保など、総合的な治水対策に取り組むべき。

     ダムが作られても、貯水湖に崩壊した土砂が流れ込みダムの有効貯水容量を早期に失うことが予想される。急激な土砂崩壊により貯水の湖面振動が起き、ダムを越流する可能性。

     ダムを作れば洪水がなくなるというのは神話。ダムさえあればという発想からダムがなくてもという発想に切り替えて、治水対策の費用効果と安全性の冷静な検討が求められる。

 

 

    渇水対策に有効か?

  徳山ダムの本来の計画には「渇水対策」はなかったが近年、渇水対策への徳山ダムの有効性が主張されている。

  しかし、最上流部への降水量が十分に確保されるか否かはダムの有無には関係がない。また下流の流量すべてが徳山ダムで決定されるわけではないためダムを作れば渇水がなくなることはない。渇水対策と徳山ダムとは切り離して議論すべきである。

 

    新規利水はあるのか

     2003年8月、水資源機構が2540億円の現行事業費を1010億円(後に50億円圧縮)増額して、3550億円(同)にすると公表。

     費用を負担する自治体のうち、岐阜県を除く愛知、三重両県、名古屋市が突然の大増額に強く反発。

     2004年3月に徳山ダムについて名古屋市は節水意識の浸透で家庭での水使用量が従来予測を大幅に下回るとして毎秒3トンの利水量を同1.7トンにほぼ半減させる方針を明らかにした。また岐阜県も毎秒5トンの利水量を2.6トンにする方針を明らかにした。また愛知県も利水量を毎秒4トンから同2.3トンにすることを明らかにした。

     4月27日、国土交通省中部地方整備局が利水の減少に対し治水対策を大幅に強化し、洪水調節機能を25%拡充する事業変更案をまとめた。変更案では利水のための容量を1億2900万トンから7800万トンに削減し、削減分を治水対策に振り向けた。また、三県一市の費用負担額の基本となる用途別負担率も公表。「治水」57.8%(現行比13.4%増)、「利水」28.2%(同8.6%減)、「発電」14.0%(同4.8%増)。この結果利水と無関係の三重県は負担が増え利水が多い愛知県や名古屋市は減る見通し。事業費問題をめぐる調整は難航が予想される。

 

     徳山ダムのあり方は木曽川水系全体の治水、利水面からの具体的検討を基に考えるべき。ダムの役割の重点を利水から治水に移し、なお建設を続けるという今回の計画変更には、流域住民を納得させる説明が不足している。

     事業費増大がまずあり、計画変更が後を追うのでは順序が逆である。慎重に検討して計画を変え、事業を中断しないよう費用増額を求めるのが筋。

 

 

    発電は必要か?

2004年4月に事業費増額問題に絡み追加負担を求められている電源開発と中部電力が発電計画を全面的に見直し徳山ダムとセットで計画されている杉原ダムの建設凍結を検討。中部電力は電力需要の低迷から杉原ダム不要論が強かった。

 

 

 

参考資料

中日新聞(040216,040325,040428),岐阜新聞(040309,040423),地域情報研究所HP