世の中にはいろいろな元素がある。それらは、ビッグバンの時点、 恒星(光る星)の中、超新星爆発の時にできる。それらが混ざったものが 太陽系の元となる。結果的に、太陽系を作る元素の組成は 配布表「太陽系の基礎データ」のようになった。 これを solar abundance (cosmic abundance) という。 これらは太陽大気の観測と隕石とに基づくものである。 これは cosmic abundance という名前が付いているけれども 宇宙全体を代表するものではない。恒星の内部や超新星爆発で 重い元素が作られているために、宇宙全体の元素組成は 時間とともに重いものが増えてゆく。
元素というものは、周囲の状況とか相対存在度に応じていろいろな形態を取る。 惑星科学的には、これらの元素は、主として3つの形態を取ると考えて、 3種類に分けるのが便利である。
[板書] 太陽系の図を描く。
[配布表] 太陽系の基礎データ
大きさ感覚も重要なので、長さを入れてゆく。
太陽系の大きさは、100 AU 程度。
各惑星の半径比が 太陽:木星:地球=100 : 10 : 1 くらい。
各惑星の質量比が 太陽:木星:地球=3 x 105 : 300 : 1 くらい
(太陽と木星の密度は 1.3-4 g/cm3,
地球の密度は 5.5 g/cm3:
太陽と木星はほとんど「ガス成分元素」、地球は「岩石成分元素」)。
その結果として、どのような内部構造の惑星ができあがったのかを見て行こう。 その際の原理は以下のようなことである。 惑星はけっこう大きいので、できるときには強い重力によって激しい衝突が 繰り返される。その結果惑星の初期は、石もけっこう融けるくらいにまで温度が 上がっていたと考えられている。その結果として、あたかも水と油が分離するように、 重いものが下へ軽いものが上へ、という層構造ができる。そこで以下のような 内部構造の惑星ができる。
遠心力=万有引力密度は(岩石成分)>(氷成分)>(ガス成分)なので、 これだけから惑星が主としてどういう成分からできているか想像がつく。
m r ω2 = G M m / r2
ω = 2 π / T
MgO : SiO2 : FeO 〜 1 : 1 : 1 (個数比)そこで、地球はそういう割合の石でできているかというと、そうでもない。
[黒板に図を描く:地球の断面図]
現実の地球は、コアとマントルの2層構造になっている。
全体の半径は 6400 km、コアの半径は 3500 km である。これは
地震波の伝わり方を調べることによって明らかにされたものである。
ちなみに地球の1周が 40000 km であるというのが、もともとのメートル法の
定義である。
マントルは石でできている。
コアは、金属鉄でできている。つまり、地球ができるとき、鉄はそれほど 酸化されていなかった。鉄はそれほど酸化されやすくない。たとえば、 惑星ができつつあるときの大気に原始太陽系成分のガス成分がかなり多ければ、 まわりは水素だらけという状況になる。そういう状況ならば、鉄は酸化されていなくて良い。
[黒板にイメージ図を描きながら]
そうすると地球のでき方として予想されるシナリオは以下の通り。
原始地球にどんどん石が降ってくる。そのうち、降ってきたときの衝突のエネルギーで
地表が暖まって地表が融けるようになる。これをマグマオーシャンという。
マグマオーシャンでは、鉄成分と石成分(マグマ)が水と油のように混ざらない。
そうすると、重い鉄は下に落ちてゆく。マグマオーシャンの深さをどう考えるかで
その後のシナリオはいろいろ考えられるが、ともかく重い鉄は中心に沈んでコアを作った。
ともかくそういうふうにして地球の大構造ができた。
マントルを構成する元素で主要なものは、そうすると
MgO : SiO2 = 1 : 1である。実際、マントルの主要構成鉱物は MgSiO3 の組成を持つ。
ところで、ことばの説明をしておこう。[岩石、鉱物:違いを知っているか学生に尋ねる]
「岩石」とは、要するに石のこと。岩石は良く見ると(目で見えることもあるし、見えないこともある)、 いろいろな粒からできている。粒のひとつひとつは、化学組成がだいたい一定で結晶になっている。
結晶というのは、原子が整然と並んだ固体だ。そういう粒を「鉱物」という。
MgSiO3という鉱物はの名前はひとことでは言えない。というのは、圧力によって、原子の並び方 (結晶構造)が変わるからだ。地表付近では輝石(pyroxene)という。もう少し圧力が高くなると 柘榴石(garnet)になる。もっと圧力が高くなると silicate perovskite(珪酸塩ペロブスカイト) になる。詳細は省略する。マントルの主要な鉱物はこれである(本当はこれは言いすぎだが、 地球科学が専門ではない人には、石の名前は嫌われるし不必要なので、これ以上説明しない)。
コアは、よりちゃんと見ると、液体の外核と固体の内核からできている。 地球の中心は温度が高いが、圧力も高いので、内側が固体、外側が液体になっている。 固体のコアは、地球が冷えてくるにしたがって液体から結晶化してきたものだろう (地球の冷却については、これ以上言わないが、私の専門分野の一つ)。
これが地球内部の大構造だが、地表付近は構造が複雑になっていて、地殻という薄皮ができている。 厚さは場所によって異なり、6-60 km くらい。どうしてこんなものができるかは、 プレートテクトニクスを抜きにしては語れない。そのときに議論されるであろう。
その内部の熱の結果として、地球の内部は対流している。
マントルは固体だが、流動する。それは氷河が流動するのと同様である (氷が融けているわけではない!!)。その地表における現れが プレート運動である。このことについては、来週以降詳しい話が あるであろうから、省略する。
一方、外核は鉄の液体なので、けっこう簡単に流動する(溶鉱炉の鉄を見ると わかるように、鉄は融けるとけっこうサラサラ流れる)。その結果、 磁場が発生し、地球は全体として磁石になっている。このことは 私の専門なのであるが、時間がないのであまり詳しくは話さない。