第11回 エントロピーの式
7月7日
本日の内容
4-5. エントロピーの式
流体力学の方程式のまとめ(一成分系、ニュートン流体)
質量保存則(連続の式)
運動量保存則(Navier-Stokes 方程式)
エントロピーの式
状態方程式
、
構成方程式
4-6. エントロピーの式と熱力学第二法則(時間がないので省略)
4-7. エントロピーと温度圧力
(4.7.4)
4-8. 断熱温度勾配
(4.8.5)
4-9. ポテンシャル温度
4-10. 熱伝導方程式の導出
(4.10.2)
◎来週は乗船実習の人がけっこういるようなので、休みにします。そこで、本講義は、これで最後になります。
本日のレポート問題(締切 7月14日)
[問題4.2]断熱温度勾配
(1)大気の(乾燥)断熱温度勾配を求めよ。ただし、2原子分子のモル定圧比熱は(は気体定数である)である。結果は数値で出すこと(以前出題した時を文字のまま使った人がいたがそれでは意味がない)。
(2)マントルの断熱温度勾配を求めよ。パラメタは、、、 とせよ。
成績評価について:
昨日までの実績に基づく暫定的な評価は(最終的には今日の出席とレポートの結果を加えて計算します)、受講登録者のうち
4年生 A 3名 B 2名 C 1名 D 1名
3年性 A 4名 B 5名 C 8名 D 3名
です。評価基準は最初に配付した通りで、出席とレポートを元にしています。もし、来年やり直すから、C になるくらいなら、成績がない方が良い、というような希望があれば受け付けます。申し出て下さい。
途中から時間がなくなると予想されるので、以下に 4-9 以下の講義ノートを付けておきます
4-9. ポテンシャル温度
4-8. で見たように、対流が起こっていると、その中ではエントロピーはほとんど一様になる。しかし、時間的空間的にまったく一定というわけではない。その違いを表現するのに、エントロピーでは直感的に分かりにくいので、ポテンシャル温度という量を用いることがしばしばある。これは、エントロピー一定のまま(断熱的に)流体塊を地表まで持ってきたときの温度として定義される。これは、エントロピーの高低を、ある意味で規格化された温度の高低に置き換えたということである。別の面から見ると、いろいろな深さ(高さ)での温度を比較するときに、断熱膨張や断熱収縮による温度変化の分を、1気圧で規格化することで取り除いた温度ということである。式で書くと、ポテンシャル温度は
(4.9.1)
で定義される。微分形でエントロピーとポテンシャル温度の関係を書くと
(4.9.2)
となる。
次に、ポテンシャル温度と本当の温度と圧力との関係を求める。(4.7.6)式と(4.9.2)式とを見比べると、
(4.9.3)
である。
定圧比熱が定数であるときに(4.9.3)を積分する。すると、
(4.9.4)
のようになる。
とくに、理想気体ではと書けることから、(4.9.4) より、
(4.9.5)
となる。
静水圧近似が成り立つときは
(4.9.6)
である。とくに、マントルではをほとんど定数と考えて良いことを利用して、
(4.9.7)
と書き直したものが良く用いられる。ただし、は上向きを正に取ってあり、は深さを表す。
ポテンシャル温度はもともと気象学で良く用いられていたが、最近では、火成岩岩石学でもしばしば用いられるようになった。岩石学でポテンシャル温度を良く使うのは、異なる場所、時間でのマントルの温度の違いを議論したいからである。マントルの温度というと、深さによる違いがあって、どの深さかを指定する必要がある。しかし、ポテンシャル温度を使えば、地温勾配が断熱温度勾配になっている場所では、深さによる違いを規格化してものを語ることができる。また、相変化を無視すると、この温度はマグマの噴出温度ともみなすことができる。
4-10. 熱伝導方程式の導出
エントロピーの式から仮定をはっきりさせながら熱伝導方程式を導く。
エントロピーの式 (4.5.7)
の左辺に (4.7.4) を用いて
(4.10.1)
となる。Fourier の法則 (4.2.6)
を用いると、
(4.10.2)
となる。これが、一般的な熱伝導方程式である。
次の二つの仮定が成り立つとするとき、 (4.10.2) は通常の熱伝導方程式
(4.10.3)
に等しくなる。
仮定1 断熱発熱項がエンタルピー項に比べて小さい。重力がなければ、運動による圧力変化は通常小さい。しかし、地球スケールの運動のように静水圧分が大きいところではこれは無視できない。
仮定2 粘性発熱項がエンタルピー項もしくは熱伝導項に比べて小さい。断層運動などでは、これが無視できない可能性がある。