第9回 球を過ぎる流れ〜ストークスの流れ〜
6月23日
本日の内容と重要な式
3-8. 球を過ぎる流れ(Stokes の流れ)
3-8-1. 問題設定:球を過ぎる流れ
3-8-2. Stokes の流れ関数(Stokes's stream function)
、
3-8-3. Stokes 流れの導出
3-8-4. Stokes 抵抗則
3-8-5. 重力場中の運動
3-8-6. 実験:水飴の粘性率を測る
本日のレポート問題(締切:6月27日昼)
[問題3.3]球が気泡の場合
講義では剛体の球が粘性流体の中を動いてゆくことを考えた。一方で、上の水滴の問題でもそうだが、球も流体でできていることが考えられる。講義とは反対の極端の場合として、気泡のまわりの流れを考えよう。気泡の形は球形のまま崩れないと考える。このとき、流れ関数、抵抗力がそれぞれ次のようになることを示せ。
(ヒント:講義の内容とはでの境界条件が違うだけで、解き方は同じ。今度のでの境界条件は、である。)
講義ノート(3-8-3, 3-8-4)
3-8-3. Stokes 流れの導出
流れ関数を用いて問題を書き直すことを考える。
軸対称な Stokes 近似の式は
である。これに (3.8.9)
、
を代入すると
(3.8.11)
(3.8.12)
となる。(3.8.11)をで微分し、これから(3.8.12)にをかけてで微分したものを引くことによりを消去すると
(3.8.13)
が得られる。これを解けばよい。
境界条件は
、 at (3.8.14)
as (3.8.15)
である。
さて、今の場合はたまたま変数分離型の解がある。変数分離型の解があるとすれば、境界条件から
(3.8.16)
という形の解があるだろうと考えられる。
これを(3.8.13)に代入すると、
(3.8.17)
となる。境界条件は
、 at (3.8.18)
as (3.8.19)
となる。
(3.8.17)の一般解は
の形をしている。
境界条件(3.8.19)より、、
境界条件(3.8.18)より、、
したがって、、
ゆえに流れ関数は
(3.8.20)
となる。これで問題が解けた。
速度は流れ関数の定義から、
(3.8.21)
(3.8.22)
となる。圧力は(3.8.20)を(3.8.11)、(3.8.12)に代入して
となることから、
(3.8.23)
と求められる。
3-8-4. Stokes 抵抗則
球にはたらく抵抗を求める。そのためには、球表面に働く応力を求める必要がある。
(3.8.24)
(3.8.25)
この応力の成分を球面全体で積分することで抵抗が得られる。
圧力項からの寄与を圧力抵抗と呼ぶ。
剪断応力からの寄与を摩擦抵抗(あるいは粘性抵抗)と呼ぶ。
両方合わせたものが球にはたらく全抵抗である。
(3.8.26)
これが Stokes の抵抗則である。
実験(3-8-6)
3-8-6. 実験:水飴の粘性率を測る
実験:ストークス抵抗の性質を確かめ、水飴の粘性を求める
Stokes 則による粘性率
水飴:スドージャム(株)製
重量 85 g、体積 61 ml ゆえ、密度は 1.4 g/cm3
Cf. メスシリンダの重量 60 g
スチールボール:
直径 11.1 mm(大)、7.9 mm(中)、4.7 mm(小)
重量 大は1個あたり 5.59 g
したがって、密度は 7.81 g/cm3
講義時間に実験をした結果
落下距離(cm) 落下時間(s) 落下速度(cm/s)
大玉
中玉
小玉
この結果、Stokes 則による粘性は
大玉
中玉
小玉
落下速度がに比例しているか?何となくしているが、あまりしていない。
実は、今の場合、メスシリンダが細いので、壁の影響が大きい。
玉が中心軸上を落下しているとして、壁の補正は以下の補正係数をかけることで行うことができる(「流体力学ハンドブック」p100)。
ただし、(球の径)/(メスシリンダの径)
メスシリンダの径が 29mm であることから、径の比は
大玉
中玉
小玉
となる。そこで、補正ファクターは
大玉
中玉
小玉
となる
補正後の粘性率
大玉
中玉
小玉