「地球惑星物理学II演習」シラバス
基本情報
- 曜日と時間
- 金曜2限 (10:30-12:00)
- 講義日程
- 夏休み前までに終わらせる予定です。今のところ、全学的な休講日以外に
休講を予定しているのは、5/10, 31 です。その場合は、全部で
11 回の講義があります。なお、休講の予定は変わる可能性もあるので、
その都度注意してください。場合によっては、補講の可能性もあります。
- 内容
- 流体力学:
地球科学者向の流体力学の基礎的な講義をします。
流体力学は地球や惑星で起っているダイナミックな運動を理解するために
必須の道具立てです。これを理解することによって、
原始太陽系円盤・大気・海洋・地下水・マントル・コアなどで起っている
流体の運動を記述することができるようになります。
本講義では、基礎方程式を導くのに半分以上の時間をかけます。
その中で、天体の鉛直方向の圧力分布を決める静水圧平衡や温度分布を
決める断熱温度勾配などの概念を学びます。
また、ゆっくりした流れを解く方法を学んで、マグマの流動などの
簡単な場合に応用する方法を学びます。
- 担当
- 吉田茂生(居室:E162, 内線:4580, e-mail:yoshida@eps.nagoya-u.ac.jp)
- 単位数
- 1単位(地球惑星物理学講座の4年生は必修です)
- 評価の方法
- 出席とレポートを元に決めます。試験は行いません。
出席は1回10点に換算し(遅刻早退は減点)、レポートは
問題によりますが、だいたい1題10点満点で採点します。
その合計点を元に評価します。だいたいの目安は、8割以上が優、
6割以上が良、4割以上が可、4割以下が不可、です。
ただし、授業態度なども加味しますし、基準は、年によっても
多少は動かします。しかし、このように、基本的には日常点で
評価するので、ふだんさぼっておいて講義の最後になって
何とかして下さいというのは認められません。
特例として、すでに流体力学の知識が十分にある者は、
受講しなくても優を付けます。第1回目に私に申し出て下さい。
十分な知識があるかどうか口頭試験をします。
- レポート
- 毎回、練習問題を出します。翌週の水曜日までに解いて、
レポートを作成し、E162 号室の前のかごに入れておいてください。
レポートということは、問題に対して、単に最終的な答えが
合っていれば良いということではなく、解く過程や論理の流れや書き方も
評価の対象になります。また、提出期限に遅れたものは減点とします。
また、レポートには、講義に対する質問や要望も適宜書いて下さい。
もっとも、疑問はその場で解決する方が良いので、質問は
講義時間内にしてくれた方が望ましいのではありますが。
講義の内容
講義の状況に応じて変わる可能性もありますが、だいたい以下の通り。
- 流体力学の基本概念と運動方程式
連続体の記述、Lagrange 微分、運動方程式、応力、静水圧平衡、アイソスタシー
- 流れの幾何学と連続の式
流線、変形の幾何学、連続の式、歪み速度テンソル、渦度
- 粘性流体の基礎と簡単な流れ
粘性応力、ナビエ・ストークス方程式、Couette 流、Poiseuille 流、Stokes 流
- エネルギーとエントロピーの式
エネルギーの式、エントロピーの式、断熱温度勾配、熱伝導方程式
- 密度成層流体
パーセル法、安定性
参考書
教科書は特に指定しません。参考書としては、流体力学の教科書は
たくさん出版されているので、そのどれを参考にしても良いと思います。
ただし、1冊で本講義を全部カバーできるものは存在しません。
参考までに、以下には、本講義で主として参考にしているものを
挙げておきます。
- 今井功 「流体力学 前編」(物理学選書14、裳華房)
- 前編だけあって後編がない教科書。物理の流体力学の泰斗が書いたもの。
本講義ではあまり詳しくやらない完全流体の運動が非常に詳しい。
粘性流体の数学的取り扱いにも詳しい。
- ランダウ・リフシッツ 「流体力学1」(東京図書)
- 流体力学全般にわたって、幅広く簡潔に書かれている。全2巻の第1巻の
方で本講義でやることが全部含まれていると言って良い。しかし、
簡潔すぎて、初学者には読みこなすのが大変。
- 木村竜治 「地球流体力学入門」(気象学のプロムナード13、東京堂出版)
- 気象学の専門家が書いた本。基礎的な流体力学の知識は前提として、
地球流体力学(すなわち回転と密度成層のある流体力学)の基礎を
分かり易く書いてある。
- de Groot & Mazur 「Non-equilibrium Thermodynamics」(Dover)
- 非平衡熱力学の教科書の代表的なもの。流体力学の専門家が書いたものだと
手薄なエネルギーやエントロピーの式の導き方が詳しく書いてある。