「流体力学」シラバス


基本情報

講義名
3年生向け「地球惑星物理学基礎V流体力学」2単位 (地球惑星物理学配属希望者は必ず受講してください)
曜日と時間
月曜3限 (13:00-14:30)
講義日程
今のところ、全学的な休講日以外に休講を予定しているのは、5/26 です。 休講・休日の補講をしなければ、全部で 13 回の講義があります。 なお、休講の予定は変わる可能性もあるので、その都度掲示等に 注意してください。場合によっては、補講の可能性もあります。
講義内容と目的
地球科学者向の流体力学の基礎的な講義をします。 流体力学は地球や惑星で起っているダイナミックな運動を理解するために 必須の道具立てです。これを理解することによって、 原始太陽系円盤・大気・海洋・地下水・マントル・コアなどで起っている 流体の運動を記述することができるようになります。 本講義では、基礎方程式を導くのに半分以上の時間をかけます。 本講義の特色は、地球科学への応用を考えて、エネルギー輸送の式の 比較的詳細な解説をするところにあります。 地球惑星科学的な概念としては、天体の鉛直方向の圧力分布を決める 静水圧平衡や温度分布を決める断熱温度勾配などの概念を学びます。 また、ゆっくりした流れを解く方法を学んで、マグマの流動などの 簡単な場合に応用する方法を学びます。
担当教員
吉田茂生(居室:E121, 内線:4580, e-mail:yoshida@eps.nagoya-u.ac.jp)
担当 TA
河村恵里(居室:E135, 内線:5063, e-mail:eri@eps.nagoya-u.ac.jp)
評価の方法
昨年の熱力学と基本的にやりかたは同じです。出席 (40%) と試験と レポート(宿題)(試験と宿題を合わせて 60%) を元に決めます。 ただし、レポート出題・提出状況によっては試験をやらない可能性も あります。出席は、遅刻早退は減点します。レポートは 問題によりますが、だいたい1題10点満点で採点します。 試験は(やるとすれば)レポートの半分くらいの比率で加えます。 だいたいの目安は、8.5割以上が優、7割以上が良、5割以上が可、 5割以下が不可、です(昨年の熱力学と異なるので注意)。 ただし、授業態度なども加味します。
このように、基本的には日常点で評価するので、 ふだんさぼっておいて講義の最後になって何とかして下さいと いうのは認められません。特例として、すでに流体力学の知識が 十分にある者は、受講しなくても優を付けます。 第1回目に私に申し出て下さい。 十分な知識があるかどうか口頭試験をします。
レポート(宿題)
基本的に毎回、練習問題を出します。その週の金曜日午後1時までに解いて、 レポートを作成し、E121 号室の前の箱に入れておいてください。 レポートということは、問題に対して、単に最終的な答えが 合っていれば良いということではなく、解く過程や論理の流れや書き方も 評価の対象になります。提出期限に遅れたものは減点とします。 また、レポートには、講義に対する質問や要望も適宜書いて下さい。 もっとも、疑問はその場で解決する方が良いので、質問は 講義時間内にしてくれた方が望ましいのではありますが。

講義の内容

講義の状況に応じて変わる可能性もありますが、だいたい以下の通りです。
  1. 流体力学の基本概念と運動方程式
    連続体の概念を解説し、運動方程式を導いてゆく。その中で応力の概念を説明し、 天体における基本的な力のバランスである静水圧平衡やアイソスタシーの考えを 解説する。
  2. 流れの幾何学と連続の式
    微小線素、面要素、体積要素などの変形の幾何学の説明を経由して連続の式を導く。 それとともに、幾何学的概念として、流線、歪み速度テンソル、渦度などを学ぶ。
  3. 粘性流体の基礎と簡単な流れ
    粘性応力の概念を運動方程式に適用して Navier-Stokes 方程式を導く。 その簡単な応用として、Couette 流、Poiseuille 流、Stokes 流などを学ぶ。
  4. エネルギーとエントロピーの式
    熱に関係する流体を扱うのに必要な、エネルギーの式、エントロピーの式を導く。 その簡単な応用として、断熱温度勾配、熱伝導方程式などを紹介する。
  5. 密度成層流体の安定性(時間があれば)
    熱対流に関する最も簡単な議論としてパーセル法を用いた安定性の議論を紹介する。

参考書

教科書は特に指定しません。参考書としては、流体力学の教科書は たくさん出版されているので、そのどれを参考にしても良いと思います。 ただし、1冊で本講義を全部カバーできるものは存在しません。 参考までに、以下には、本講義で主として参考にしているものを 挙げておきます。

今井功 「流体力学 前編」(物理学選書14、裳華房)
前編だけあって後編がない教科書(著者逝去のため未完)。 物理の流体力学の泰斗が書いたもの。 本講義ではあまり詳しくやらない完全流体の運動が非常に詳しい。 粘性流体の数学的取り扱いにも詳しい。
ランダウ・リフシッツ 「流体力学1」(東京図書)
流体力学全般にわたって、幅広く簡潔に書かれている。全2巻の第1巻の 1/3くらいに本講義でやることが全部含まれていると言って良い。しかし、 簡潔すぎて、初学者には読みこなすのが大変。
P.チャドウィック 「連続体力学―簡明な理論と例題」(ブレイン図書出版)
応用数学の人が書いているので、非常に数学的な教科書。変形の幾何学など 数学的な側面を勉強するのに役立つ。
木村竜治 「地球流体力学入門」(気象学のプロムナード13、東京堂出版)
気象学の専門家が書いた本。基礎的な流体力学の知識は前提として、 地球流体力学(すなわち回転と密度成層のある流体力学)の基礎を 分かり易く書いてある。
de Groot & Mazur 「Non-equilibrium Thermodynamics」(Dover)
非平衡熱力学の教科書の代表的なもの。流体力学の専門家が書いたものだと 手薄なエネルギーやエントロピーの式の導き方が詳しく書いてある。