基礎セミナー 第8回(7月10日)
1.
定常状態、滞留時間
「地球環境化学入門」 2.3(pp.26,28), Box4.3(p.159)
物質循環を考える際に基本的な考え方であるボックスモデルに関する説明をする。ボックスモデルでは、物質が地球上のいろいろな場所を巡ってゆくようすを次のようにモデル化する。「海」とか「大気」とか、地球上の場所を種類によって切り分けて、それぞれをひとつの「箱(リザーバー)」だと考える。箱の中の物質の動きは無視して、箱の間の物質のやりとりを考えるのがボックスモデルである。もう少し細かく見たいと思ったら、たとえば「海」を「太平洋」「大西洋」「インド洋」の3つの箱に分ける、てなことをする。
ひとつの箱を見る。
箱の中の物質量
単位時間内に箱に入ってくる量(流入率)
単位時間内に箱から出てゆく量(流出率)
定常状態
,
よく起こること
流出率が、その物質の量に比例する
物質が多ければ多いほどたくさん出てゆく。
(は比例定数)
別の言い方をする:箱の中にある物質の中から、ランダムに一定の割合でものが流出してゆくとする。時間だけ経つと全部なくなってしまうような割合で流出するとすれば、単位時間当たりには
の割合で物質が流出するはずである。なぜなら、
で全部の量になるからである。そういう意味で、を滞留時間(residence time)とか寿命(liftime)などと言う。
さて、その結果としてどうなるか? これが実は先週のレポート課題
(1) の場合
(2) の場合(ただし、は定数とする)
解き方は4通りくらい
グラフ:概形を描いてみる
定常状態では
だから、
で滞留時間を求めることができる(Box4.3)
2.
stock と flow
ボックスモデルでがstockでがflow
この区別をすることが大切
(例)経済のはなし
家計でいえば?金持ちとは?
GNP は flow か
stock か?景気が良いとは?公共投資の役割とは?
経済における時間とは?環境問題とは?
このようにボックスモデルを頭に描きながらものごとを整理してゆくと、わかりやすいことがある。
3.
滞留時間をキーワードにして「地球環境化学」第4章を読む
4.
Fortran90 実習
数値計算の意義
問題解決の実践法のひとつ:知識を調べるだけでなくて、自分で作り出す、
あるいは追体験することで実感する
(実感の方法=科学の方法:理論、計算、実験、観察、観測)
4-1. 数値計算の手法
数値的に
という式を解くときの考え方。
最も単純な Euler 法
4-2. Fortran90
課題:雛形( の場合)をもとに実際にプログラム( の場合)を作る。厳密会がわかっているので、数値誤差が計算できる。それはの選び方によってどのくらい変わるか?
4-3. gnuplot
結果は図示するのが良い。そのための代表的なソフトウェアが gnuplot
(これは UNIX 上のフリーウェア)
使い方を記したホームページの例
(ホームページ情報は、科学関係の問題ではあまり適当なのがない
ことも多いが、やはり計算機関係は役に立つものが多い)
1) 日本語のわかりやすいページ
http://art.aees.kyushu-u.ac.jp/members/kawano/gnuplot/index.html
2) 本家ホームページ
使用例
例1)グラフを画面に出力する
% gnuplot
gnuplot> plot “decay.dat”
with lines
例2)グラフをポストスクリプトファイルに出力する
gnuplot> set terminal
postscript
gnuplot> set output “decay.ps”
gnuplot> plot “decay.dat”
with lines
これだと画面に出なくなるので、また画面に出るように戻すには
gnuplot> set terminal x11
でもとに戻す。
gnuplot の終了法
gnuplot> exit
使い方がわからないときは、オンラインヘルプも役立つ
% gnuplot
gnuplot> help
や
gnuplot> help set
や
gnuplot> help plot
などでけっこういろいろ書いてある