映画 THE CORE をめぐって

last update: 2003/07/01
最近、THE CORE という映画がロードショーにかかっている。 地球内部をテーマにした SF なんて作れないんじゃないの、と 思っていたのに、何とか作ったというところはすごい。

しかし、その出来は不満である。ストーリー自体は ハリウッドの冒険映画によくありがちなもの。男女一人ずつの ヒーロー・ヒロインが出てきて、その周囲の人と協力しながら 困難に立ち向かう。途中の危機のたびに周囲の人に死人を出しながら、 なんとかヒーローとヒロイン(+α)だけは生き残り、最後に ロマンスが芽生えるというもの。加うるに、世界はアメリカを 中心に回っているとでもいいたいような筋立て。 偉大なるマンネリである。

それは予想通りとして、問題は、科学の知見に照らして、どれだけ オッと言わせるものがあるかということである。 もちろん SF 映画である以上、科学的に無理なところがあるのは ある程度仕方がない。しかし、科学者から見てもオッという所が あるかどうかが、一つの見所のはずである。本作に関しては、 その点に関しても駄目だな、というのが私の正直な感想である。 一応合っているのは、地球が内核-外核-マントル-地殻という 構造をしているということと、外核が液体で磁場を作っているということ ぐらいで、あとは全く想像の世界。 せめて、「コアの回転が止まる」ことについて、もうちょっと説明が あっても良いと思うのだが、無い。そんな調子なので、映画自体は 講義で取り上げるには値しない。

そういうわけで、今回は、映画自身を問題にせず、映画のプログラムに 載っているサイエンスライターの金子隆一氏の解説を肴にして講義を してみたい。金子氏はいろいろものを読んでいるらしいことはわかるが、 やはり専門家ではないので、全般的に少しずつ表現がずれている。 そこをちょっとつつきながら、コアのダイナミクスの説明をしてゆく。