今回宇宙、そして惑星について調べたのだが、この惑星学というのは新しい疑問が出る度に賛否両論の意見が飛び交い、解析技術を高め解決していくという繰り返しの過程がみられた。その意見の対立や解決理由を中心にまとめていきたいと思う。
まず、惑星学の根本である宇宙の成り立ちやその仕組みについて調べていく。
宇宙の構造
宇宙の中の銀河などの物質は、ニュートンの万有引力の法則にしたがってお互いに引き合い現在の状態を保っている。お互いに引き合っているにもかかわらず宇宙がつぶれてしまわないのはなぜだろうか。
このことを説明するのに、異なる二つの考えがあった。
・「静的」宇宙モデル
これはアインシュタインの考えで、恒星や銀河の質量が静止し、安定した状態であるためには、宇宙にも圧力のような反発力があるのではないか、というものである。
・「動的」宇宙モデル
これは宇宙が大きさも密度も静止したつり合いの状態になく動いている、という考えである。宇宙は無限のかなたまで飛び散っている途中、またはつぶれるまでの一時的な期間にいるということだ。初速を十分につけて投げたときスピードが速ければ粒子たちは重力で引き合っていても無限のかなたまで飛び散っていく。またスピードが遅い場合や引き合う力が強い場合でも、粒子はある広がりまで行ってから戻ってくるので、ある一定期間はつぶれないですむからだ。
この後動的宇宙モデルのほうが正しいことがあきらかにされていくが、この事実は宇宙に
は終わりがあるというということも示しているため、アインシュタインもこの考えを最後
まで認めたがらなかった。
宇宙の誕生
ここでまた異なった意見の対立が見られた。それはロシアの物理学者ジョージ・ガモフ
とフレッド・ホイルらとの意見の対立である。
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<ガモフ> <ホイル>
宇宙の初期・・・非常な高温=火の玉宇宙 元素=恒星の内部で合成
↓ 恒星の内部・・・非常な高温高圧状態
急激な温度上昇 ↓
↓ 水素の核融合によりヘリウム生成
宇宙の主元素、水素生成 ↓
↓ ヘリウムの核融合により重元素生成
水素合体によりヘリウム生成 ↓
↓ 超新星爆発の際非常に重い元素生成
その後わずか数分で他の重元素生成 火の玉宇宙は必要ない


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ガモフに対して・・・ヘリウムより重い元素は火の玉宇宙ではできない。
ホイルに対して・・・ホイルの考えで元素ができたとすると、ヘリウムの量が
現在の量に足らない。
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結論
水素やヘリウムは火の玉宇宙ででき、ヘリウムより重い重元素は恒星の
内部でできた。恒星の生死が繰り返されるにしたがって重元素がだんだん
増えていった。
また、宇宙はビッグバンによって誕生したといわれている。
ホイルは宇宙が膨張しているという考えに反対していたため、ガモフの火の玉宇宙論を否定してこの宇宙の大爆発をあざけるつもりで「ビッグバン」と名づけたものが今日定着してしまっている。
宇宙が膨張しているとき、初期宇宙の表面は私たちから非常に速い速度で遠ざかっている。するとある温度で出発した光の波長は大幅に引き伸ばされて長波長のマイクロ波になる。この初期宇宙の表面からの放射が発見されれば、宇宙が膨張していることの確実な証明となるのだが・・・
1964年
アメリカのペンジャストウィルソンによって開発された宇宙電波検出用の高性能アンテナによって、宇宙のすべての方角から同じ波長で降り注ぐ電波が発見された。これが初期宇宙の表面からの放射であった。
これによってビッグバン宇宙論は確実なものとなった。
太陽系の誕生
それでは次に、今明らかになった宇宙の中にある太陽系について、ということに話題を
変えたい。太陽系についても、その概念が認識されて以来さまざまな意見がぶつかりあった。その1つ1つを追ってみていくことにする。
18C
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哲学者イマヌエル・カントと物理学者かつ数学者のピエール・ラプラスに
よって提案されたもの。
太陽系=ゆるやかに回転するガスの塊
冷却
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塊が収縮し回転速度上昇。赤道付近からガスを吹き出す。
回転速度低下し、再び収縮。
繰り返し・・・
このガスは回転軸に垂直方向に巻きちらされるので円盤状になる。
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まき散らされたものが惑星へ、最後に残ったものが太陽へ。
フーシェによる問題点の発見
太陽系の質量から判断すると、惑星の公転は太陽の自転の200倍
もの勢いを持っている。
吹き出されたものの方が、吹き出させたものより勢いを持っている。
不自然!!
20C初頭
遭遇説![]()
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別の天体が太陽の近くを通過
恒星の引力によって太陽からガスが引きずり出される。
ガスの分裂によって惑星誕生
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このガスには恒星の引力が加わって早く回転する。
1939年
ライマン・スピッツァによる問題点の発見
このガスは太陽コロナのように高温であるため膨張力がありまとまり
はもてない。拡散してしまう。
円盤は低温でなければならない!!
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シュミレットの提案
星間雲の中でも濃密部分で背後からの光を遮って黒く見えている暗黒星雲を
太陽が通過したときにそのガスを捕獲した。
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確実性に欠ける。
20C中期
1955年
恒星・惑星同時形成説![]()
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フレッド・ホイルの提案=星雲説の問題点を解決
太陽の磁場がプリズマ化した円環と結びつく。
円環は高速回転する太陽に振り回されて拡がる。
円盤となる。
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その後の観察の結果、恒星と円盤は同時に形成されたことがわかる。
20C後期
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林グループ、アル・キャメロンの提案
これまでの説に加えて・・・
遠心力が効くくらい回転が激しかった部分が円盤になって、あまり回転して
いなかった部分が太陽へ。
これ以降、この説をベースとして地球型惑星や巨大ガス惑星の形成が議論されていく。
ところで、初期円盤とはどのような状態だったのだろうか。
ここにも対立する2つの仮説があった。
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<低質量復元円盤モデル> <大質量モデル>
京都大学林グループとサフロノフが提唱。 キャメロンが提唱
円盤ガスの中で固体成分だけが集まる 中心となる太陽と同程度の
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重い円盤
小天体(微惑星)誕生 自分自身の重力で分裂
地球型惑星やガス惑星へ
温度や重力の関係で大きな質量となった
惑星のコアに円盤ガスが取り込まれる
巨大ガス惑星に
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固体コアがつくられるまでに 地球や天王星のできた場所に
円盤ガスは消える。 なぜガスが存在しないのか
à木星・土星にガスが流れ込む
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時間がない

その後の研究で
円盤は星ができるときに必然的にできる副産物。
時間的に2つのモデルの中間の時間に円盤が形成されたことがわかる。
=標準モデル
こうして、太陽系形成の流れはつかむことができた。
それでは、太陽系惑星の形成をこの流れの中でみていくことにする。
太陽系惑星の誕生
太陽
〜太陽に近いところ〜
太陽重力の影響により、惑星の重力の影響は遮られる。
近くの微惑星のみ集める
小さな原始惑星、岩石惑星
〜太陽から離れたところ〜
太陽重力の影響が少ない
原始惑星の軌道間隔が広がり、原始惑星の引力が届く距離も長くなる。
ひとつの原始惑星が材料にできる微惑星の総量が大きくなる。
質量の大きな惑星
大量の大気保持、不安定になり固体惑星表面に落ち込む
周りの円盤ガスが流れ込む
惑星質量増大、さらにガスが流入・・・
巨大ガス惑星へ
材料物質は豊富にあるが巨大ガス惑星にはならなかった。
・微惑星の公転周期が長い
・太陽から離れるほど領域が広い 微惑星の衝突頻度低下
à空間的な密度が疎
・動きが遅い コア形成が遅い
コアが十分な大きさになってガスが流入で
きるようになったときにはガス円盤が消失していた。
巨大氷惑星へ
このように大まかに太陽系の形成をみてきたが、ここからは地球の周りをまわっている衛星、月についてみていくことにする。
月の誕生
月の起源に関する説には大きく分けて三つの説がある。分裂説、捕獲説、連星説である。
分裂説 ![]()
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1878年 ダーウィン提唱
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本来一つの天体であった地球と月が原始地球形成の際の高速自転により遠心力で外層部がちぎれた。これが月となる。
外層部がちぎれるほど速く(地球は三時間で自転するという計算になる)原始惑星が回転していたら微惑星が衝突しても振り飛ばされるため、微惑星から地球が集積するという論理に矛盾する。
捕獲説
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太陽系内のどこかで作られた月が、地球に接近した際に捕らえられ、それ以来地球
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の周りを回っている。
この可能性は少ない。
連星説
ある天体が地球に近づいてもその天体は地球の脇を通り過ぎるだけで再び離れていく。
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地球も月も同じところで同じ物質から同時に生まれた。
アポロ計画によって持ち帰られた月の石は、地球をほぼ同じ45〜46億年前のもの
と判明。
地球と月とでは平均密度、化学組成が異なっている。
こうして三つの説ともに否定される。そこで四番目の説として集積説がある。
集積説
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分裂説と連星説の要素をあわせもつもの。
地球形成の際のエネルギーがその表面を加熱し、熱い大気形成。高温ガスは地球から
流れ出て冷却され、地球を回る塵の粒となった。これが集積して月へ。
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これをもう少し詳しく説明すると・・・
地球への巨大な天体の衝突。この衝突破片がロッシェ限界内に飛び散る。
ロッシェ限界:回転速度の違いなどによって、地球のそばにおいて引力で物体が
くっつけなくなる領域
破片がお互いの引力で近寄るが、ロッシェ限界内であるためくっつけない。
回転でひきのばされ渦巻きができる。地球に近いほうが速く回る。
外側部分が振り回されてロッシェ限界外に飛ばされるため引力によって破片は固まる。
月へ
この考え方が現代有力な説となっている。
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今回、太陽系の形成から惑星の形成、そして月の形成と、形成過程を順に追ってきた
が、どの部分においても多くの説と、それに対する賛否両論が存在した。そしてその反
意見側からの問題を一つずつ、解析技術の発達とともに解決してきた。これほどまで科
学技術が発展した今日でも、まだまだ未解決部分が多く残っており、惑星学というのは
実際に見るということが困難であるという理由もあるのだろうか、非常に奥が深く、謎
に包まれたままだということを改めて実感した。
これから先、新しい説がでればまたそれについての論議を重ね、より正しい推測を見
つけようとする。その積み重ねによって謎に包まれた惑星学、宇宙の世界が少しずつ
でも開けていくのだろう。そして、宇宙で働いている不思議な力を、地球内に応用させ
て利用できるようになればすばらしいことだと思った。
〜参考文献〜
・惑星学が解いた宇宙の謎 井田茂 洋泉社
・月の科学 久城育夫、武田弘、水谷仁 岩波書店
・月のすべて 柳澤正久 朝倉書店