金曜一限　吉田茂生先生

地球惑星の科学レポート

０６０４０２８０６

理学部一年　百合草陽介

さまざまな姿をみせる銀河

　銀河についてあまり理解がなかった僕は銀河に関する本を読んでみて、銀河には様々な種類があることを知った。そしてその莫大なスケールに圧倒された。このレポートでは銀河の様々な種類とその形成についてまとめたいと思う。

＜銀河とは＞

　銀河とは数百億から数千億という多数の恒星や大量の星間物質などが集まった天体であり、この宇宙には１０００億個以上の銀河があるといわれている。銀河ははじめ、水素とヘリウムから成るガスの塊であった。それが固まって星を作り、現在の形になった。しかし、現在ある銀河もまだまだ活発に活動しており、発展途中だといえる。

＜円盤銀河について＞

ここで、基本的な銀河のひとつである円盤銀河の形について考えてみる。円盤の直径は厚さの数百倍ある。円盤の中心部にはバルジと呼ばれるふくらみがあり、見かけは楕円銀河を小さくした感じである。バルジと円盤を取り囲むように球状にハローという構造がある。ハロー部分には球団星団と呼ばれる天体と、球状星団以外の天体をさすＭＡＣＨＯがある。ＭＡＣＨＯには未知の天体、非常に暗い星や褐色矮星なども含まれる。球状星団は銀河が誕生した時期とほぼ同時期にできて、かなり年老いた星の集まりである。球状星団は外側に行くほど分布密度が低くなっていく。そして、銀河に最も多く存在しているのが、まだよくわかっていないダークマターという物質である。

※ ダークマターについて

ダークマターはみえないけれど質量があるとされている。これが考えられたひとつの理由として星の速さがどの半径でも大体同じだという事実がある。遠心力と重力についての運動方程式を考えて、速さについて解くと、

　　　　ⅴ＾２＝ＧＭ／ｒ　　（Ｇは重力定数）

となり、Ｍを銀河の中心部に集中した質量と考えて一定とすると、速さは半径が大きくなるにつれ遅くなるはずである。しかし、回転速度が等しいので銀河の質量Ｍが半径ｒに比例して大きくならなければいけない。しかし、外側に行くにつれ、光度は暗くなるので、質量は半径に比例して増えていかない。そこで、見えない物質のダークマターが宇宙に充満していると考えられた。

図１（『天の川の正体』より）

円盤銀河。中心部分がバルジで、中心にはブラックホールがあるともいわれている。

＜銀河のスケール＞

　大きさはバラエティに富んでいるが典型的な銀河の半径はおよそ１０＾２０mである。質量は１０＾４１kgであり、比較として地球のサイズは、半径６．４×１０＾６m、質量６×１０＾２４kgである。これは感覚でとらえられないほど、大きい。その銀河が三個から数十個集まったものを銀河群といい、また、５０個以上の銀河が１０００万光年程度の範囲に集まったものを銀河団という。さらにそれらの銀河団同士が集まり数千億光年もの広がりを持つのが超銀河団。さらにその超銀河団も網の目のようにつながっている。

図２（『天の川の正体』より）

銀河団のイメージ

＜銀河の種類＞

銀河を形で分類したもので銀河のハッブル分類と呼ばれるものがある。この分類では、銀河は楕円銀河と円盤銀河の二種類に大別されている。

楕円銀河は見かけの角度により丸く見えるものから、ある程度ひしゃげたものまであり、比較的老いた星によって構成されている。円盤銀河は棒状構造の有無からさらに二つに分けられる。渦巻き銀河と棒渦巻き銀河である。円盤の中心部は老いた星により成っているが、円盤部はガスが多いため、星が誕生するなどして比較的若い星が多い。

図３（『ＳｋｙＳｅｒｖｅｒ』より）

ハッブル分類

E0~E7が楕円銀河で数字が増えるほどひしゃげたものになる

S0はレンズ銀河とも呼ばれ、円盤はあるけれど渦巻きがなく、バルジだけのもの

Sa~Scが渦巻き銀河で、SBa~SBcが棒渦巻き銀河である。aからcに向けて渦の巻きつきがゆるくなっていく。ハッブルは、銀河は左から右へ進化すると考えていたため、それが間違いだとわかった現在でも相対的に見て左側が早期、右側が晩期といわれている

　これで、銀河が分類できた。しかし、この分類に収まらない銀河がある。これを不規則型銀河と呼ぶ。不規則型銀河は形も大きさも様々であるが、比較的小さな、よく発達していない銀河に多く見られる。ハッブルの分類に当てはまる銀河を普通の銀河とすると、不規則型銀河は例外的な銀河である。しかし、本当に例外としてよいのだろうか。具体的な不規則型銀河をいくつか調べることで、考えていきたい。

＜不規則型銀河＞

［爆発する銀河］

銀河の円盤部の巨大ガス雲の中で星が作られるのは、珍しいことではないが、突然爆発的に太陽よりも十倍以上重たい星をたくさん作ることがある。この現象をスターバーストという。スターバーストが起こると…

→それほど重い星は寿命が１０００万年から１億年程度しかない

→一万個から十万個以上星が同じ時期に寿命を迎えて超新星爆発する。これを超新星バーストという

→そのエネルギーは想像を絶するほど大きい

→超新星バーストによるエネルギーで熱いガスの塊、スーパーバブルが膨らんでいく

→円盤に直交する方向でバブルをとめるガスがなくなり、はじける

→はじけたスーパーバブルは風のように広がっていく。この風を銀河風またはスーパーウインドという

このスターバーストと呼ばれる現象は近傍の銀河の数%で起こっている

図４（『ＮＡＳＡ』より）

スターバーストリング　ＮＧＣ４３１４

［シェルを持つ楕円銀河］

銀河の周りに弓の形をした星の集まりがあるものがある。この弓状の構造を「シェル（球殻）」と呼ぶ。何重もシェルをまとう銀河もあり、なんとも不思議である。しかし、これもうまく説明がつく。

まず、楕円銀河の中心にその質量の一割以下の円盤銀河が突っ込む

→円盤銀河は楕円銀河にまっすぐに落ち込み、楕円銀河の潮汐力により破壊される

→楕円銀河の重力を振り切って離れていく星もあるが、大半はとどまる

→とどまった星たちはそれぞれの持つエネルギーにより、楕円銀河を中心として振動する

→振動する星は楕円銀河の中心を通るとき最高速度に達し、その向きを変えるところで速さ０になる

→つまり端のほうの滞在時間が長く、明るく見えることになる

→そのため楕円銀河を取り囲むように球状にシェルがあるように見える

これは約数億年間の間の出来事である。しかし、シェルがある銀河は珍しいものではなく、楕円銀河の２割にシェルがあることがわかっている。

［リング状の銀河］

普通、銀河は中心のほうが明るい。星の分布密度が中心ほど高いためだ。しかし、その反対に、輪の形をした銀河もある。リング銀河と呼ばれるものだ。なぜ、そのような銀河ができるかというと…

まず、円盤銀河の中心に回転軸方向に沿って、別の銀河が近づく

→円盤銀河の星たちはその銀河の重力を受けて、中心に集まってくる

→近づいてきた銀河が衝突し、貫通する

→中心に集まってきていた星たちは、重力を受けなくなり、その反動で外側へ散らばる

→そしてリングと、貫通した銀河が残る

また、リング銀河のひとつに車輪銀河がある。これは、ガスが不安定になったために、密度が高くなり、星ができたものである。また、円盤の差動運動（星がどの半径でも回転速度が一定なために、外側の星のほうが一周するのに時間がかかるという運動）により煙のようにガスの塊が回っている。

図５（『ＮＡＳＡ』より）

右側が車輪銀河。右側の二つのうちどちらかが貫通した銀河で、どちらが衝突したかはわかっていない。

［昆虫のような銀河］

昆虫のように触角を伸ばしたようにみえる銀河を、アンテナ銀河という。それは次のように銀河が合体し、見る位置によって偶然観測することができる。

まず、円盤銀河が、ある円盤銀河に近づく。ここで近づく銀河を相互作用銀河といい、その軌道方向はある円盤銀河の回転方向と同じでなければならない。また、二つの質量は大体同じであることも条件の一つ。

→重力を受けて円盤軌道の星は相互作用銀河に引っ張られる（橋と呼ばれる部分）と共に、潮汐作用によって相互作用銀河の反対側にも膨れる（尾と呼ばれる部分）。相互作用銀河も同じように二箇所膨れる

→二つの銀河が近い位置で楕円軌道を描く

→それぞれお互いの橋がつながって消滅。二つの尾が伸びる

→これを軌道面のある方向から見るとアンテナ銀河となっている

図６（『ＮＡＳＡ』より）

アンテナ銀河　ＮＧＣ４０３８・４０３９

触角が伸びているようにみえる

このようにアンテナ銀河はできるが、すでにわかっているようにこの銀河は合体する途中の銀河で、この後、尾はなくなっていってしまうと考えられる。銀河が美しいのは、進化しきった姿よりもその途中の活動的なときの姿かもしれない。

［合体する銀河］

今までに述べた銀河は特殊な条件でできたものである。今から述べる合体銀河はただ単純に合体するといったらおかしいが、普通に合体するものである。二つの円盤銀河が衝突して、中心部分は乱れ、円盤部分はお互い無関係な方向に伸びている。そしてさらに合体が進むと大きな楕円銀河のようになっていく。

図７（『ＮＡＳＡ』より）

ＮＧＣ７２５２の中心部。二つの円盤銀河が衝突してできた渦巻きで、合体の激しさからは想像ができないほどきれいである

また、いくつかの銀河が合体して、巨大な楕円銀河である多重合体銀河となるものもある。しかし、このことが起こるとなると、銀河はどんどんくっついていき、最終的には宇宙には巨大な楕円銀河がひとつ残るだけになるのではないかと考えられる。

＜銀河に例外はあるのか＞

ここで、はじめに提起した「不規則型銀河を例外としていいのか」という問いに答えたい。他にも様々な銀河があるが、シェルを持つ銀河、リング状の銀河、アンテナ銀河など今まで見てきたように、一見して例外としたくなるような銀河も、きちんと考えれば、どんな銀河も楕円銀河と円盤銀河の組み合わせで表せるのではないか、またはその途中の状態であるのではないかと考えられる。銀河を動かしている力は、重力だけなので、単純に表せることができるのだと思う。

＜まとめ＞

銀河は本当に巨大なスケールで活動している。ただ合体するといっても１０億年くらいかかる。その大きさは、光が何十万年もかかってやっと通過できる距離だ。本当に巨大だ。そのためここでは、万有引力だけが働いている。引力は光が何万年もかかる距離もかまわずに引き合っている。引力とは空間の歪みの結果だということを感じた。

そして銀河や星は互いに関係しあって存在している。いつかは、ひとつの巨大な楕円銀河になってしまうかもしれない。なので、様々な活動をしている今がいろいろな種類もあり、銀河も活動していて、美しいと思う。

　銀河は巨大だが単純だ。前よりもずっと、銀河に親しみがわいた。

（参考ＵＲＬ）

http://www.nasa.gov/home/　　　『ＮＡＳＡ』

http://hubblesite.org/　　　　　『Ｈｕｂｂｌｅｓｉｔｅ』

http://skyserver.nao.ac.jp/jp/　　『ＳＤＳＳ　ＳｋｙＳｅｒｖｅｒ』

http://www.expocenter.or.jp/shiori/milky_way/ginga3.html　　『天の川の正体』

http://www10.plala.or.jp/super_yosakoi/Projects/index-j.html　　『Ｔ－Ｍｏｒｉ　Ｉｎｔｅｒｎｅｔ　Ｐｒｏｊｅｃｔｓ』

（参考文献）

『不思議な銀河の物語』　谷口義明著　裳華房

『銀河の育ち方』　　　　谷口義明著　地人書館