CD 聴き比べ
Tchaikovsky Piano Concerto in B flat major, Op.23

last update: 2005/05/01
チャイコフスキーのピアノコンチェルト。5枚所有。 大きくタイプを分類するのに第 1 楽章の演奏時間も書いておく。 速い方から遅い方へという順で並べる。ただ、2、3楽章はまた順序が 入れ替わるし、そもそも速さの差はあまりない。

私はあまりピアノの音の差がよくわからない人間なので、オーケストラの方にも 重点をおいて以下書いておく。

番号独奏者指揮者オーケストラ 録音年レーベル第1楽章の時間
1Boris BerezovskyDmitri KitaenkoMoscow Philharmonic Orchestra 1990TELDEC (小学館 クラシックイン)20 分 25 秒
2Niek van OosterumEduardo MarturetBerliner Symphoniker 1992Aurophon (Deagostini The Classic Collection)20 分 45 秒
3Claudio ArrauAlceo GallieraThe Philharmonia Orchestra 1960EMI21 分 18 秒
4Sviatoslav RichterHerbert von KarajanWiener Symphoniker 1962F.M.INC22 分 07 秒
5Jorge BoletCharles DutoitOrchestre Symphonique de Montreal 1987London (同朋社 The Great Composers)22 分 32 秒

音源について

本格的クラッシクファンが見ると鼻白みそうなのが2つ入っている。 2 は Deagostini のマガジン付属のもの。ただ、聴いてみた感じは録音も良くて (P)&(C)AUROPHON となっているので問題ないように思う。 4 はよく駅とか本屋とかで安売りされているようなやつで、 音は良くなくて怪しい。もともと Deutsche Grammophon から出ている名盤の 誉れ高いものと同じ音源の海賊版だろうか?

第1楽章

まず、この曲の場合、冒頭堂々と勇ましく入って欲しい気がする。 その点では 2, 3, 4 はオーケストラとピアノの両方ともカッコ良く入っている。 5 は Dutoit の特徴かもしれないが、オーケストラを美しくなめらかに 流れに乗せようとする感じで、好みの問題かもしれないがこの曲らしくないと思う。 ピアノも同じ傾向で、美しくなめらかに持って行く感じである。 1 はライブで録音が悪いのかもしれないが、オーケストラが弱くて勢いもない。

冒頭以外も同様だが、3 がピアノもオーケストラも両方とも堂々としていて いかにも協奏曲らしい。ピアノは自在に弾いて十分に表情が付いている。 4, 5 はどちらもベテランの安定したピアノ。5 は、オーケストラがなめらか系。 1, 2 はどちらもピアノが若手で、とくに 1 は動きが硬い感じがする。 1, 2 ともカデンツァは速めだが、表情に面白味が少ない。 2 のオーケストラは録音のせいか少しトロンボーンが目立ちすぎ。 1 はオーケストラが弱くて今一つめりはりも無いし、音のバランスも悪い感じ。

第2楽章

こういう緩徐楽章だと Dutoit-OSM のなめらかさが生きてくる。 1 の Kitaenko-MPO はやはりイマイチ。

第3楽章

この楽章は、とくに3人のベテランはそれぞれの演奏の持ち味が良く出ている。 3 の Arrau のは一貫して協奏曲らしい堂々とした演奏。 4 の Richter は溌剌とした自在さを感じさせる。 5 の Bolet-Dutoit-OSM はピアノ、オーケストラとも、これが バレエ音楽の名手であったチャイコフスキーのものであることを十分に 思い起こさせるチャーミングな踊りの音楽になっている。 2 の van Oosterum は、わりと音が粒々になって聞こえる感じ。 1 は演奏時間が短いわけではないのに何となく慌てた感じがする。

全体

3 の Arrau がロマンティックで堂々としていて、この中では最もこの曲に 相応しい演奏だと思う。Arrau はドイツ音楽で有名なようだけど、 この曲にも合っている気がする。

web page を見て回ると

Arrau の写真

2 の演奏家や指揮者、オーケストラはあまり知られていないけれど、それぞれ 自分のホームページがある。
Niek van Oosterum オランダ生まれのピアニスト
Eduardo Marturet ベネズエラ生まれの指揮者
Berliner Symphoniker ベルリン交響楽団 日本語で「ベルリン交響楽団」と訳される団体には2つあるそうな。 ひとつはこの Berliner Symphoniker(旧西ベルリン側)で、もうひとつは Berliner Sinfonie-Orchester(旧東ベルリン側)だそうだ。

ところで、その Berliner Symphoniker は、2004 年秋に市からの補助を打ち切られ、 つい先頃 (2005 年 4 月) 破産状態に追い込まれ最後の演奏会を開いたそうだ。 世界中せちがらくなって、伝統あるドイツとて例外ではないらしい。


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