科学と文化をつなぐ〜アナロジーという思考様式


書誌情報

編者:春日直樹
初版第1刷発行: 2016 年 3 月 21 日
執筆部分:吉田茂生・中尾央「類推としてのアナロジー―地球の内核の異方性のモデリングを行った一研究を事例として」, pp.63-77
出版社:東京大学出版会

内容紹介と自薦の辞

一橋大学の春日直樹さんが、文系と理系の研究者を集めて研究会を開いていたものの報告書のようなものです。 皆結構バラバラなことを話す変な研究会で、いったいどうまとまるのかと思っていたのですが、春日さんのおかげで何とか形になりました。

私が書いた部分は、本を出す段階になって、春日さんに自分の研究でアナロジーが使われている例を書けといわれて書いたものです。 最初は、私は研究ではアナロジーなど使わないと言って嫌がったのですが、それはアナロジーという言葉の定義次第だということを春日さんに紹介してもらった Dunbar (1997) という論文で学びました。 アナロジーと聞くと、最初は、素人向けの説明に使うアナロジーのことを考えて、そんなのは研究では使わないのにと思ったのですが、それは狭く捉えすぎでした。 科学というのは、少しずつの改良の積み重ねです。ほとんどすべての研究は、他の研究をヒントにして、ちょっと改変を加えたようなものです。 そのちょっとの改良のうちで、「似たものを参考にして推論や考察をすること」を「アナロジー」と呼んでも構いません。

そのように考えると、私もアナロジーをたくさん使っていたということに思い至り、昔の内核の研究を題材にして、どのようにアナロジーを使ったを書いてみました。