新しい地球惑星科学


書誌情報

編者:西山忠男・吉田茂生
初版第1刷発行: 2019 年 3 月 13 日
吉田執筆部分:基礎編第 9 章「地球はどのような物質でできているのか」(西山忠男・吉田茂生)、 基礎編第 12 章「火山とともに生きる」(西山忠男・吉田茂生)、応用編第 2 章「地球と惑星の形状と重力」(吉田茂生)、 付録A「静水圧平衡とアイソスタシー」(吉田茂生)
出版社:培風館
本の web page:補足ページ

内容紹介と自薦の辞

西山忠男さん(熊本大学)が大学教育のための「参照基準」なるものをまとめたのを機に、 これに準拠した教科書を熊本大学と九州大学の教員で作りたいということで話が始まりました。 私は九州大学側の取りまとめを依頼され、編者をすることになりました。 地質・岩石系はおもに熊本大学の教員が、地球物理系はおもに九州大学の教員が執筆しています。 熊本大学と九州大学で適当な教員がいない場合は、ほかの大学の教員にも依頼しました。 こういう多くの執筆者がいる本は、原稿集めが大変で(最初から予想されたこととはいえ)、完成は 当初予定より1年以上遅れました。

大学1年生向けということが想定されており、高校の教科書よりは難しく、岩波講座のようなものよりは易しいものになっています。 執筆者によるバラつきがある程度ありますが、編者としてはできるだけある程度のレベルに収まるように、 執筆者にいろいろ要求しました。なので、平均的には読みやすくなっていると思います。 けっこう高度な内容も含まれているので、大学初年次といわず、もう少し高学年でも十分に使えると思います。 一応、1章を1回で授業して1年分ということで、基礎編 15 章と応用編 15 章に分かれているのですが、 執筆者はたいてい盛りだくさんな内容を 1 つの章に詰め込んであるので、真面目に授業をすると 1 章を 1 回で終わらせるのは難しいと思います。

私の執筆部分は上記の通り4章に渡ります。当初は、応用編第 2 章の「地球と惑星の形状と重力」だけの予定だったのですが、 諸般の事情によりたくさん書く羽目になりました。まず、応用編第 2 章にアイソスタシーのことを書いていなかったので、 西山さんからのご要望もあり、書くならいろいろな章の内容に関係しているので1章分くらい書きたいということで付録A 「静水圧平衡とアイソスタシー」ができました。基礎編第 9 章と第 12 章で西山さんと一緒に書いているのは、当初予定していた 執筆者が書いてくれなかったので、急遽編者がしゃしゃり出て書いたものです。

「地球と惑星の形状と重力」は、要するに測地学の内容ということです。ページ数が限られているので題材の選択に迷ったのですが、 「参照基準」の 9 ページを参考にして、ジオイドと座標系の話を書くことにしました。 10 ページには、潮汐、地球回転、アイソスタシーなども書いてあったのですが、限られたページ数ではとても全部は無理ということで、 参照基準でも前の方に挙げられているジオイドと座標系に絞ることにしました。 ただし、潮汐については、基礎編第 1 章に図らずも書かれていました。ジオイドについて、高校の教科書との違いは、数式を使って 回転楕円体になる理由とその内部構造との関係を書いたことです。とくに、Radau-Darwin の式を書いてあるのは、日本語の教科書だと ほかに無いと思います。しかし、惑星科学への応用もあるので重要だと判断して入れました。 座標系については、正標高の定義とか緯度の基準となる地球楕円体についてきちんと書きました。 コラムのジオイド異常や重力異常の話はページ数調整のために最後に入れました。当初、ページ数が無くなったため完全に省いて 心残りだった部分がちょっと復活しました。ついでに、基礎編 10 章の最後にあるコラムの「断熱温度勾配」もページ数調整のため 私が最後に入れたものです。

「静水圧平衡とアイソスタシー」は、地球惑星科学の基本の一つなので、こういう話はどこかにまとまってあったほうがよいということで 当初の予定に無かったものを加えました。このような話は静力学の基本なので、いろいろなところで使われるのですが、 章立てを考えるときには入れないことが多い(この教科書を計画したときもとくに入れなかった)ので、抜けがちです。 教科書を編集していて、多くのところで使っているけど誰もきちんと説明していないことに気づいて、加えることにしました。 アイソスタシーは、歴史的事情から重力のところで説明されることが多いのですが、 こういう教科書では、重力のところではなく基本的な静力学として説明すべきだと思います。 昔の教科書だと、エアリーとかプラットとか説明してあるのがありますが、これは歴史的文脈でなければ意味がありません。

「地球はどのような物質でできているか」は、私がこういう概論的な授業を担当したときによく教えるような順番で構成しました。 すなわち、元素の太陽系存在度の説明から始まって、量の多い構成要素から順番から取り上げてゆくというものです。前の1/3くらいは主に私が書いていて、 後の2/3くらいは主に西山さんが書いています。

「火山とともに生きる」で私が書いているのは、主に 12.3 の火山噴火の物理的なメカニズムに関する部分です。12.1, 12.2 の 岩石学的な部分は西山さんの執筆です。