研究の紹介
吉田茂生
地球惑星物理学講座セミナー : 2008/04/18
最近の研究
- 海底の熱水循環
朝倉君(D1)と川田君(PD)と共同で続けている数値計算を主とした研究。
化学と流体力学がからむ問題としておもしろい。川田君の D 論は、
塩水の2相分離のために重い塩水が対流層の底にたまってよどむという計算と、
硬石膏が沈殿して熱水だまりができるという計算であった。
朝倉君の M 論は、対流領域の幾何学的形状が、噴出する熱水の組成に
大きく影響するという計算であった。
- コア内のダイナモ作用のメカニズム
堀さん(D3)と研究をしている。磁場生成の方程式の基本的な性質を
丁寧に調べている。いわゆるα効果というものがどういうものかを
一例ではあるが厳密に図示して見せたのは初めて。
- 火山の噴火のダイナミクス
東大地震研にいたときに、小屋口さんと、噴火のダイナミクスについて
気液2相流の力学という立場で研究をしたのだが、まだやり残したことが
たくさんある。平井君(M1)が来たので研究復活の予定。
現在休眠中の研究
- コア・マントル熱的相互作用
大学院の時から途中休んだり再開しながら続けているテーマ。
コアの中の流れに関する観測は、ほぼ磁場だけだが、それとて
コア表面のことしか分からないし、流れの時間スケールに比べて
非常に短い観測しかない。それで、単独ではなかなか言えることが
少ないので、マントルとの関連で議論するのが一つの切口である。
私は、マントルがコアに与える熱的な影響の基礎的なプロセスを
地道にひとつひとつ研究して行くというやり方を取っている。
最近の、数値ダイナモの大型計算が流行する風潮から言えば異端だが、
必要不可欠なアプローチだと思っている。
- 地下水(と微生物?)による縞縞の形成
博物館の吉田さんとちょっと始めた(が休んでいる)研究。
堆積物の空隙に水が染み込んだところで酸化鉄の縞模様が出来ているものがある。
どうしてできるのだか、全然分かっていないのだけど、何かの反応拡散系だと
思っている。
- マントル対流と地震学的異方性
岡本君(修士卒業、現在気象庁)、隅田さん(金沢大)、中久喜さん
(広島大)とマントル最下部の異方性が部分溶融体の変形によって形成されると
いう研究をした。最近は、マントル最下部に関しては、post perovskite 相の
話が出てきて、それを使っても対流のおもしろいパターン変化が
計算できると思っているのだが、やっていない(川田君が非常に関心を持っているが、
川田君も本職が忙しくてやっていない)。
- 内核の構造とその形成メカニズム
大学院の時から、熊澤先生(現在、静岡大)、隅田さん(現在、金沢大)
との共同研究を通して、異方性や内核表面の構造の問題を扱った。
いまでも研究テーマとなりうる課題をいくつか持っているのだが、手が回っていない。
- 磁場変動のメカニズム
大学院生の時にやっていたけれど、ちょっとうまくいかないところも
多くて、それ以後休眠中。コア・マントル相互作用という視点で研究したい。
やりたいと思ってはいるがいつになるかわからない研究
- 地球惑星内部物質の物性計算
PD の時にだいぶん勉強をしたが、研究を始めるところまで行かず、
それ以後も、ときどき思い出したようにセミナーをしたりするが、
ぜんぜん研究になっていない。この手の計算は手間がかかるわりに、
応用への道が遠いのが欠点。でも、本当は、単なる物性計算ではなくて、
流動や破壊などの現象と組み合わせておもしろい道がたくさんあると思っている。
ほとんど過去のものとなりつつある研究
- 重力観測
地震研にいたときは大久保さんに連れられてしょっちゅう重力観測をしていた。
地震研にいたときは絶対重力計 FG5 とラコステ相対重力計を使っていて、
名大に来てから2年生向け実験でシントレックス重力計を使ったから、
現在一般に多く使われている重力計の3種目制覇である。
周囲の状況によっては復活の可能性もある。
- 干渉 SAR
地震研にいた頃、地殻変動観測手段として世界中が注目するようになったので、
いろいろ勉強はしたが、外国の後追いになっていてあまり新しいことが
できそうになかったので、以後放ってしまった。流行が一段落したから、
落ち着いて考えると新しいこともあるのかもしれないが。