熱圏・電離圏

last update: 2005/12/22

熱圏と電離圏

中性大気を見たとき、86 km より上で高さとともに温度が上昇していく。 これが熱圏である(高度の値は US Standard Atmosphere 1976 [本1])。 一方で、熱圏領域では光電離により電離層が形作られている。こちらの 荷電粒子の方に注目すると、だいたい同じ領域は電離圏と呼ばれる。 90 km より下を D 領域、90-130 km を E 領域、130 km より上を F 領域と呼ぶ。(高度の値は [本2])。

情報源

[本1] 理科年表 2003

[本2] Kivelson and Russell eds. (1995) "Introduction to Space Physics" (Cambridge University Press)


下部熱圏/E領域

高度 100-120 km のあたりの下部熱圏(電離圏では E 領域)を考える。 ここでは中性粒子密度は 1018--1020 m-3 くらいで、荷電粒子密度は < 1012 m-3 くらい なので、中性粒子が圧倒的に多い。ただし、荷電粒子は光電離で出来ているので、 昼間に多くて夜に少ないという昼夜の差がある。

熱圏のダイナミクスの基本は地衡流ではない。昼間加熱されることによる 単純な水平対流パターンというのが主。

一方で、ion drag と呼ばれる効果もある。それは、 力の観点から言えば、磁場が荷電粒子を引っ張り、その荷電粒子が 衝突で中性粒子を引き摺るということである。 磁気圏の磁場に引っ張られる対流と言っても良い。 [講演1] によると、ion drag が重要になる高度は、 夏は 110 km 以上、冬では 120 km 以上くらい (夏の方が太陽が当たるので荷電粒子が多いため季節差が出る)である。

情報源

[講演1] 津田卓雄(名大 DC) 「電場が中性大気を駆動する」 at SELIS 横断セミナー (2005/12/20) 名古屋大学環境総合館講義室2