バージェス頁岩の動物群

last update: 2004/07/27

ひっくり返った Hallucigenia

Hallucigenia は、Burgess 頁岩の動物群の奇妙さを代表するものの一つとして Gould の Wonderful Life では宣伝された。日本語版では、 表紙の図案になってさえいる。それは 7 対の棘のような脚を持ち、 背面に7本の触手があるものとされた。この復元は Conway Morris (1977) による。

ところが、実際はこの復元は誤りであり、上下が逆であることが分かった。 棘は背中に付いていたのであり、触手と見られたものは、実際には対に なっていて脚であることになった。このことは、澄江 (Chengjiang) 動物群の 近縁の化石を調べることによりわかった。論文としては

L. Ramsköld and Hou Xianguang (1991) New early Cambrian animal and onychophoran affinities of enigmatic metazoans, Nature, 351, 225-228
に書かれている。Lars Ramsköld は、さらに Hallucigenia の化石を 調べ直すことにより、はじめ1列の触手と見られたものが実際は2列で 確かに対になっていたことを確かめた。そこで、それが脚であることが 決定的になった。この事情は
Past Lives: Chronicles of Canadian Paleontology -- Chapter 9 The Hallucigenia flip by Natural Resources Canada
という web page に書かれている。

これらのことから、Hallucigenia は今では有爪動物門 (Onychophora; 現生のカギムシ Peripatus の仲間) に分類されている。

情報源

[本] Stephen Jay Gould (1993 日本語版) 「ワンダフル・ライフ」(早川書房)

[本] Simon Conway Morris (1997) 「カンブリア紀の怪物たち」(講談社現代新書 1343) pp.69-73, 123-124 のあたり