地球ダイナモの散逸とダイナモに必要な熱

original:2012/07/25
last update:2012/07/25

ダイナモの散逸の見積もり

[1] Buffett

散逸を \[ \Phi= \left( \frac{ \eta B^2 }{ \mu L^2 } \right) V \] と表す。Kuang and Bloxham (1997) の結果から、\( B = 2.5 \) mT、\( L = 1.9 \times 10^5 \) m になるとスケーリングして、\( \Phi = 0.05 \) TW となる。 ただし、Kuang and Bloxham (1997) では、散逸の半分が粘性による。実際のコアでは、散逸はほとんど Joule 散逸だろうから、散逸の見積もりとしては \( \Phi = 0.1 \) TW の方が良いであろう。

[2] Christensen and Tilgner

数値ダイナモの計算をある程度系統的に行って、散逸を地球コアにスケーリングした。

ダイナモの散逸 \( D_{\text{ohm}} \) そのもののスケーリングを考えるのではなく、 散逸時間 \[ \tau_{\textrm{diss}} = E_{\textrm{mag}}/D_{\textrm{ohm}} \propto l_B^2 /2 \eta \] のスケーリングを考える。というのも磁気エネルギー \( E_{\textrm{mag}} \) はパラメタごとに大きく変わるから。

磁気 Reynolds 数 \( Rm \) が 50 から 2000 くらいの範囲で数値計算を行った。 そうすると、 \[ \tau_{\textrm{diss}}/\tau_{\textrm{dipole}} = 1.74 Rm^{-1} \tag{2.1} \] というスケーリング則が得られた。Reynolds 依存性も少し加えて \[ \tau_{\textrm{diss}}/\tau_{\textrm{dipole}} = 3.58 (Rm Re^{1/6}) ^{-0.97} \tag{2.2} \] とした方が少しフィットが良くなるものの、Karlsrule 実験室ダイナモの結果も説明しようとすると、式 (2.1) の方が良いようである。そこで、式 (2.1) の方を採用する。

地球のコアの \( Rm, \tau_{\textrm{diss}} \) は、以下のようにして推定する。 まず、永年変動のタイムスケールが \[ \tau_n = \tau_{\textrm{sec}}/n \] という球面調和関数展開の \( n \) 依存性を示すとして \( \tau_{\textrm{sec}} \) を求める。 一方、計算によると \[ \tau_{\textrm{sec}}/\tau_{\textrm{dipole}} = 21.7 Rm^{-1} \tag{2.3} \] という関係がある。地球では \( \tau_{\textrm{sec}} = 535 \) yr、 \( \tau_{\textrm{dipole}} = 29,000 \) yr なので、 \( Rm = 1200, \tau_{\textrm{diss}} = 42 \) yr であることがわかる。

この結果として、散逸は以下のように推定される。 計算から、コアの中の平均磁場強度は、CMB の磁場強度 \( (n \lt 13 ) \) を 5-7.5 倍すれば良さそうだということが分かる。 CMB の磁場強度 \( ( n \lt 13 ) \) は 0.39 mT だから、コアの中の平均磁場強度は 2-3 mT ということになる。 そうすると、\( E_{\textrm{mag}} = (2.8-6.2) \times 10^{20} \) J となるので、 \( D_{\textrm{ohm}} = 0.2-0.5 \) TW ということになる。

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