高圧実験技術(音速測定)
- original:2014/04/14
-
- last update:2014/04/14
-
高圧下での音速測定の技術
超高圧下での音速測定技術には以下のようなものがある [1]。大別すると、伝達時間測定をするか、フォノンによる光の散乱を測定するかである。
伝達時間測定
- パルスエコー超音波法
- 試料の一方の端からピエゾ素子で音波を出して、もう一方の端で信号を受ける。
- [制約条件] 出せる超音波が MHz 程度までなので、試料が mm 程度よりも大きくないといけない。
したがって、ダイヤモンドアンビル装置では使えず、大容量型でないと使えない。
- GHz 干渉計 [Spetzler et al. (1993) PAGEOPH, 141, 341]
- GHz の音波を buffer rod と sample をくっつけたものに投入する。すると、sample の端で反射してきた波や
buffer rod と sample の境界で反射してきた波などが干渉する。この干渉パターンから sample の音速を推定する。
- [制約条件] 圧力媒体が固化した時の非静水圧性が問題になる(らしい)。
- レーザー励起ピコ秒パルス法 [1,2]
- 超短レーザーパルスを試料の一方の端に当てる。すると、少し (数 K くらい) 温度が上がって熱弾性で変形し、弾性波を出す。
弾性波が試料の反対の端に達すると、光弾性効果でそこの屈折率が変わるので、反射率の実部と虚部が変わる。
さらに、表面の変位によっても反射率の虚部が変わる(つまり反射に時間の進み/遅れが生じるということ)。
この反射率の変化をレーザーパルスを当てることで測定する。パルスの delay を走査することで、反射率の変化が時間の関数として測定できる。
複素反射率はマイケルソン干渉計で入射光と反射光とを比較することで測定する。
- レーザーのパルス幅は 100 fs だが、音波のパルス幅は数〜数 10 ps くらいになる。
- ダイヤモンドアンビル装置で使用できるので、100 GPa オーダーの高圧まで測定可能。
フォノンによる光の散乱の測定
- Brillouin 散乱
- フォノンによる光の非弾性散乱の測定。ダイヤモンドアンビル装置で測定できる。
- [制約条件] 透明な試料でないと使えない。
- implusive stimulated light scattering (ISLS) [e.g. Abramson et al. (1999) Ann. Rev. Phys. Chem. 50, 279]
- 試料に2方向から光を当てると熱的な干渉縞ができる。その干渉縞が音波を出す。
第3の光がその音波で回折されるのを観測して音波の周波数を測定する。
音波の波長と周波数から波の速度がわかる。
- [制約条件] 不透明試料では表面波を測ることになる。そこで、表面のいろいろな性質の影響を受ける。
- 非弾性X線散乱 (IXS)、核共鳴非弾性X線散乱 (NRIXS) [e.g. Sturhahn and Jackson (2007) GSA Special Papers 421, 157]
- X 線のフォノンによる散乱を測定する。57Fe のような共鳴を起こす原子核だと散乱断面積が大きくなって測定にかかる。
- [制約条件] 音速を直接測定しているわけではないので、誤差がやや大きい。
情報源
- [1] F. Decremps et al (2014)
Sound velocity of iron up to 152 GPa by picosecond acoustics in diamond anvil cell,
Geophysical Research Letters 41(5) (16 March 2014) 1459-1464,
doi:10.1002/2013GL058859
- [2] F. Decremps et al. (2008)
Sound velocity and absorption measurements under high pressure using picosecond ultrasonics in a diamond anvil cell: application to the stability of AlPdMn,
Physical Review Letters 100 (28 January 2008) 035502, 4pp.,
doi:10.1103/PhysRevLett.100.035502