放射能
last update: 2012/07/05
放射能を測る単位
- Bq (ベクレル)
- 1s の間に 1 個の原子崩壊を起こす放射能。SI 基本単位で表すと s-1 になる。
- Sv (シーベルト)
- 人体が放射線を受けたときの影響を表す単位。
情報源
[本] 理科年表 2004 年版
放射能の規制値
被爆量に関する規制値
- ICRP 1990 年勧告に基づく年実効線量限度
- 作業者:50 mSv/年、5年間の平均が 20 mSv/年
- 一般公衆:1 mSv/年
確率的影響としては、がんに対する放射線のリスクは、1 Sv あたり 5.5% という計算をする。
- 作業者の 20 mSv/年は、生涯(大人になってから 50 年)の累積線量が 1 Sv となるのが
限度だと考えて求められた数値である。
- 一般公衆の 1 mSv/年という数字は、
生涯(子どもから含めるとすると 100 年)の累積線量を 100 mSv
(いろいろな感受性の人がいるので、職業人の 1/10 とする)に抑えようとしたもの。
- リスクが放射線量に比例していると仮定すると、
一般公衆の 1 mSv/年は、年間 5.5×10-5 という計算になる。
これは、交通事故のリスクである年間 7.9×10-5 と同程度。
放射性物質量に関する規制値
原子力安全委員会が定めた規制値
- 飲料水の放射性ヨウ素は 300 Bq/kg ; 放射性ヨウ素 300 Bq は 6.6 μSv に相当
- 飲料水の放射性セシウムは 200 Bq/kg ; 放射性セシウム 200 Bq は 2.6 μSv に相当
情報源
[web page] ICRP 1990 年勧告の国内制度等への取入れについて(意見具申) in 文部科学省
[web page] ICRP 2007 年勧告の国内制度等への取入れについて(第2次中間報告) in 文部科学省
[web page] 放射線防護の基礎:作業者と一般公衆の防護 in 原子力百科事典 ATOMICA
[web page] 放射線防護の諸量:線量限度 in 原子力百科事典 ATOMICA
[web page] 柴田徳思「放射線量の読み方と的確な対処法」 in
工学院大学緊急シンポジウム「福島原発事故を理解する」(2011/04/02)
[web page] 2007 年 ICRP 勧告 in メジカルビュー社
[web page] 福島第一・第二原子力発電所の事故に伴う水道の対応について by 厚生労働省健康局水道課長
放射能と放射性物質の測定
福島原発事故以来、放射性 I や Cs の測定はあるのに、放射性 Sr の測定が少ないのはなぜかということが話題になる。その理由をまとめる。
131I, 137Cs も 89Sr, 90Sr もβ崩壊する。なので、
それだけだと I,Cs も Sr も β線を測れば良いと思えるが、そう単純ではない事情がある。
β- 崩壊では、β線とともに反ニュートリノが放出される。
そして、β粒子と反ニュートリノの間のエネルギー分配は不定である。
そのため、β線のエネルギースペクトルが連続的になってしまい、スペクトルからでは
核種を判断できない。
そこで、単に試料を取ってきて、β線を測ろうとすると、核種が区別できない。その上、
Sr よりも放射能の大きい Cs が主に測定されてしまう。そこで、放射性 Sr を測定するには、
他の放射性物質を取り除いてからβ線を測らないといけない。その精製作業には数日以上かかる上、
そのような精製作業により、試料が法規制を受ける放射性物質になってしまうため、特別の管理をする必要がある。
これが、Sr の測定値が少ない理由である。
131I の場合は、正確には 131I がβ崩壊して
131Xe の準安定状態になり、それが直ちにγ線を放出して安定状態になる。
γ線は線スペクトルになるため(131I ならば、364.489 keV と 636.989 keV)、
γ線を測定すれば、容易に定量が出来る。137Cs も同様に 661.6 keV のγ線を出す。
一方、Sr はγ線を放出しないので、この手が使えない。
放射線の測定装置
β線:液体シンチレーションカウンタ (LSC)、ガスフローカウンター
γ線:ゲルマニウム半導体検出器、NaI シンチレーションカウンター
情報源
[雑誌記事] 小豆川勝見、小森昌史 (2012) [コラム 放射線測定の現場から No.10]
放射性ストロンチウムの測定法, 科学 82(7) pp.709-711
[web page]
雨水や日常食のストロンチウム90やセシウム137はどうすれば測れるの?
in 「日本の環境放射能と放射線」 by 財団法人日本分析センター