小惑星・彗星
last update: 2014/12/15
小惑星の分類
小惑星には細かい分類があるが、重要なのは次の3つである。
- (1) C type
- low albedo, 炭素質コンドライトと似たスペクトル
- C type とそれに関連したグループは、小惑星全体の 1/3 を占める
- main asteroid belt の外側に多い
- (2) S type
- moderate albedo, 赤っぽい表面
- 鉱物としては pyroxene, olivne, metallic iron があるように見え、
その意味で石鉄隕石に近い
- 小惑星の中で最も多い
- main asteroid belt の内側に多い
- (3) M type
- albedo が比較的高く (0.1--0.2)、ニッケルや鉄のようなスペクトルを示す。
- スペクトルは隕鉄やエンスタタイトコンドライトに似ている。
- 鉄隕石や石鉄隕石の母天体である可能性が高い。
普通コンドライトと S type 隕石の関係についてはまだわかっていない部分が
多いようである。
- French (1997) : 普通コンドライトに似た小惑星は無いように見える。
普通コンドライトの母天体ははっきりしない。
- 矢野 (2002) : S-type 隕石は小惑星の中で最も数が多い。一方で、
地上の隕石に最も多い普通コンドライトとはスペクトル型が一致しない。
このことは、パラドクスとして長い間研究者を悩ませてきた。
近年、宇宙風化作用により、普通コンドライトが変成すると、スペクトルが
S(IV) 型に似てくることが実験的に示された。
MUSES-C によってそれを確かめたい。
- Bottke et al (2006) : S-type 隕石は、
変成しているが溶融はしていない普通コンドライトに似ている。
情報源
- [専門事典]
Linda M. French (1997) Asteroid in Encyclopedia of Planetary Sciences,
Chapman and Hall
- [教科書]
Imke de Pater and Jack J. Lissauer (2010) "Planetary Sciences" 2nd ed., Cambridge University Press
- [論文]
Willam F. Bottke et al. (2006) Iron meteorites as remnants of planetesimals
formed in the terrestrial planet region, Nature, 439, 821-824
(16 February 2006), doi:10.1038/nature04536,
full text
- [web page]
矢野創 (2002) 世界初の小惑星サンプルリターンへの挑戦:日本の惑星探査機 MUSES-C,
ネイチャーサイエンス 2002 年 4 月号, 88-93,
本文
in MEF 小天体探査フォーラム
衛星をもつ小惑星
- 243 Ida
- 初めて衛星が発見された小惑星。1994 年にガリレオ探査機が衛星を発見して S/1994(243)1 Dactyl と名付けられた。
- 45 Eugenia
- 1998 年に衛星が発見され、S/1998(45)1 Petit-Prince と名付けられた。
- 762 Pulcova
- 2000 年 2 月に衛星が発見された。
- 90 Antilope
- 2000 年 8 月に連星であることが発見された。
- 2000DP107
- 2000 年 9/30-10/7 に連星であることが発見された。それぞれの直径は 800 m と 300 m
- 87 Sylvia
- 2 つの衛星を持つことが初めて発見された小惑星。最初のは 2001 年に発見され、S/2001(87)1 Romulus と名付けられ、
次のは 2004 年に発見され、S2001(87)2 Remus と名付けられた。
情報源
これまで探査衛星が近づいた小惑星
- 951 Gaspra
- S-class
- 1991 年 Galileo (NASA) が接近。
- 243 Ida
- S-class
- 1993 年 Galileo (NASA) が接近。
- 衛星 Dactyl を持つ。
- 253 Mathilde
- C-class
- 1997 年 NEAR (NASA) が接近。
- 433 Eros
- S-class
- 1998-2000 年 NEAR (NASA) が接近。
- 9969 Braille
- 1999 年 Deep Space 1 (NASA) が接近。
- 25143 (1998SF36) イトカワ
- S-class
- 2005 年 「はやぶさ」(JAXA) が接近、着陸してサンプルリターン。
- 21 Lutetia
- M-class。しかし、M 型というわりには、それほど表面が金属的ではない。
- 2010 年、彗星探査機 Rosetta (ESA) が接近。M 型小惑星に初めて近づいた。
- 1999 JU3
- C-class
- 2018 年 「はやぶさ2」(JAXA) 着陸して、サンプルリターン予定。
情報源
これまで探査衛星が近づいた彗星
- 1P/Halley
- 1986 年、Giotto (ESA)、Vega1 (ソ連)、Vega2 (ソ連)、さきがけ (ISAS)、すいせい (ISAS) が接近。
- 19P/Borrelly
- 2001 年、Deep Space 1 (NASA) が接近。
- 81P/Wild 2
- 2005 年、Stardust (NASA) が接近して、塵を収集。サンプルリターン。
- 9P/Tempel 1
- 2005 年、Deep Impact (NASA) が子機を衝突させて、噴出した物質を調べた。噴き出してきたのは不揮発性の塵が多かった。
- 2011 年、Stardust (NASA) が接近。
- 103P/Harley 2
- 2010 年、Deep Impact (NASA) が接近。
- Churyumov-Gerasimenko 彗星
- 2014 年 11 月に、ESA の探査機 Rosetta が着陸機を投下。
情報源
- [雑誌記事]
Michael D. Lemonick「カイパーベルトから来た彗星―探査機が到達」 日経サイエンス 2015 年 1 月号, 52-60.
- [雑誌記事]
渡部潤一「彗星とは何か?:謎を秘めた天体のすべて」 パリティ 2014 年 12 月号, 4-10.