原子力発電

last update: 2011/05/03

核分裂反応

原子力発電で一番重要な核分裂反応は、235U が中性子を吸って不安定になり 2つに割れるというものである。生成する原子は、質量数 90 付近のものと 140 付近のものが多い。 それに加えて中性子が平均で 2.5 個程度放出される。 質量数 90 付近のものとしては Kr, Sr など、 質量数 140 付近のものとしては Cs, I, Xe などが代表的。

もうひとつ起こる反応は、以下のようなものである。 238U が中性子を吸って239U になり、 これが2回ベータ崩壊して 239Pu になる。 それが中性子を吸って不安定になり2つに割れる。

中性子は、速度が遅いほど吸収されやすい。 核分裂や吸収が起こる確率は、中性子の(速度)-1、 したがって(エネルギー)-1/2 に比例する。

情報源

[本] 榎本聰明 (1996) 「わかりやすい原子力の基礎知識(改訂2版)」(オーム社)

臨界状態

235U が 1 つ核分裂すると平均で 2.5 個の中性子が出てくる。 この中性子が 235U にぶつかるとまた核分裂をする。 このようにすると鼠算式に核分裂が起こることになる。しかし、その途中で、 中性子は外に漏れたり他の核種に吸収されたりするので、1 つの核分裂でできた中性子のうち 235U にぶつかるものは 2.5 個よりも少ない。 制御棒やホウ素を入れてこの中性子吸収量を調整して、1 個の核分裂でできた中性子のうちの 1 個が新たに 235U にぶつかるようにすると、定常的に核分裂が起こるようになる。 この状態を臨界状態と言って、原子力発電は臨界状態を保つように行われる。

情報源

[本] 榎本聰明 (1996) 「わかりやすい原子力の基礎知識(改訂2版)」(オーム社)

原子炉のタイプ

日本で使われている原子炉は、軽水炉で、沸騰水型 (Boiling Water Reactor, BWR) と 加圧水型 (Pressurized Water Reactor, PWR) の2タイプがある。
BWR : アメリカの General Electric (GE) 社から導入し、東芝・日立が担当
東北電力、東京電力、中部電力、北陸電力、中国電力、日本原子力発電
PWR : アメリカの Westinghouse (WH) 社から導入し、三菱重工が担当
北海道電力、関西電力、四国電力、九州電力、日本原子力発電
ただし、原子力業界は 2006 年から再編されており、3つのグループに集約されている。 (1) 東芝・WH … PWR 方式 (2) GE・日立 … BWR 方式 (3) AREVA(ヨーロッパの会社)・三菱重工 … PWR 方式

情報源

[web page] 日本の原子力発電の概要 by 日本原子力産業協会
[本] 吉岡斉「原発と日本の未来」(岩波ブックレット 802) の pp.34,50-51