化学平衡と相平衡の基礎
- 2003/05/14
- original
- 2003/05/14
- last update
熱力学の第2法則と変化の方向
熱力学の第二法則のエントロピーによる表現
内部エントロピー生成 d'Sint を導入すると
となる。
閉じた系で体積変化以外の仕事がない場合を考えて、いろいろな場合に
変化の方向を示す条件を求めておく。
- 断熱的 (d'Q=0) なら
- 内部エネルギーは
なので、V,S 一定なら
- エンタルピーは
なので、p,S 一定なら
- ヘルムホルツ自由エネルギーは
なので、V,T 一定なら
- ギブス自由エネルギーは
なので、p,T 一定なら
2つの系の間の平衡条件
2つの系 A, B が熱力学的に接しているとき、相平衡条件は
である。これを示す。
系 A+B は孤立系だから、平衡条件は

(1)
で表される。また、孤立系であることから、全エネルギー、全体積、
全粒子数は保存されるので、

(2)
が要請される。
まず、(1) から

(3)
が得られる。そして、これに (2) を適用すると

(3)
となる。平衡状態では任意の変化に対してこれが成立しなければならないので
(そうでなければその方向の変化が自発的に進んでしまう)、
上の平衡条件が得られる。
化学変化による内部エントロピー増大と化学平衡条件
孤立系の中で、化学式
で表されるような反応が起こっているとする。ただし、化学反応は
内部で一様に起こるものとする。孤立系である以上、
内部エントロピーは増大しているはずである。
反応が dξだけ進行したものとする。このときの内部エントロピーの
増加を計算するために、同じ反応後の状態に内部エントロピーを増やさずに
移行することを考える。それには、反応を起こさず外との物質のやりとりだけで
実現すればよい。すなわち、反応前物質を取り除き、反応後物質を入れる。
このことによるエントロピー変化は、
となる。このとき注意しておくことは、反応前の状態は非平衡状態なのだが、
あたかも平衡状態であるかのようにしてエントロピーをちゃんと定義できると
考えるということである。
したがって、孤立系における反応による内部エントロピー増大は
ただし、A は「親和力」(affinity) で
によって与えられる。A/T が反応を進行させる「力」である。
内部エントロピーの増大のためには、
である。すなわち、A の符号によって、反応の向き(
dξの符号)が決まる。とくに平衡状態では
A=0
である(化学平衡条件)。
Clausius-Clapeyron の式
純相 A と純相 B が平衡にあるとする。片方が1モル減るときに
もう一方が1モル増えるとすると、化学ポテンシャルで書いた平衡条件は

(4)
である。これが、p,T の関数としてどうなっているかを見るのが
Clausius-Clapeyron の式である。(4) の両辺は p,T の小さな
増分に対し次のように変化する。
すなわち、
となり、結局
(Clausius-Clapeyron の式) が得られる。
相律
相律は次の式で表される。
f=2+c-p-r
where
- f: 自由度
- c: 成分の数
- p: 相の数
- r: 化学反応の数
これの導き方は T,p,μiα を変数に取るか、
T,p,xiα を変数に取るかで2通りある。
ただし、μは化学ポテンシャルで、x はモル分率である。
すべて、示強変数である点に注意する。相律では示強変数しか問題にしない。
ここで、下付き添字 i は成分を示し (i=1,2,...,c)、
上付き添字 α は相を示す (α=1,2,...,p)。
|
変数 |
条件1:各成分の化学ポテンシャルがすべての相で等しい |
条件2:化学反応の親和力が0 |
条件3:すべての変数は独立ではない |
method1 |
T,p,μiα |
μ11=μ12=...
=μ1p
μ21=μ22=...
=μ2p
...
μc1=μc2=...
=μcp |
A1 = 0
A2 = 0
...
Ar = 0 |
Gibbs Duhem の式
0 = - S1 dT + V1 dp
- Σi ni1 dμi1
0 = - S2 dT + V2 dp
- Σi ni2 dμi2
...
0 = - Sp dT + Vp dp
- Σi nip dμip
|
method2 |
T,p,xiα |
μ11=μ12=...
=μ1p
μ21=μ22=...
=μ2p
...
μc1=μc2=...
=μcp
ただし、μiα は
T,p,xiαの関数 |
A1 = 0
A2 = 0
...
Ar = 0 |
モル分率は足すと1
Σi xi1 = 1
Σi xi2 = 1
...
Σi xip = 1
|
個数 |
2+cp |
c(p-1) |
r |
p |
したがって、自由度の数 f = 変数の数−条件の数 = 2 + c - r - p
なお、方法1と2の条件3の形が対応していないように見えるのは、
μと共役な変数は n なのに、ここでは示量変数を考えないといけないために
x を用いているためである。方法2では、全体のモル数が平衡条件に影響を
与えないことを暗黙のうちに使っているために、モル分率を足して1になる
ということが入ってくる。一方、方法1では、化学ポテンシャルが
モルギブス自由エネルギーであることから出てくる Gibbs-Duhem の式から
条件が与えられる。
[元のページに戻る]