和田秀樹連続対談 医者のからくり

文藝春秋 2002 年 10 月号
成田空港第2ターミナル地下のキオスクで購入
読了日:2002/09/14
日本の医療が駄目だという対談集。同じ号の 別のところに、自分はアメリカではなく 日本で手術を受けて良かったという記事が載っているのが面白いところ。 もっともそっちのほうは単に個人の経験を述べているだけなので たいした論説ではない。

[(KM)の内容] 大学は研究で評価されるところなので、教育や臨床が おろそかになっており、それが日本の医療レベルの低下を招いている。 また、一律料金、出来高払い制度なので、医師の腕が上がらず、 検査漬け、薬漬けを産んでしまう。
[感想] 私のような理学系でも、研究と教育のバランスは常に悩むところで、 いわゆる雑用があることも考えると、その両方ともを満足にこなすことは難しい。 医学系だと上のような実害を伴うことも想像に難くないところである。

[(BH)の内容] 製薬会社から医師に金が流れるために、薬害が起こりやすい システムになっている。
[感想] 薬害事件の度に言われることではあるが、何とかして欲しいものだ。

[(NA)の内容] 心臓外科のような専門性の高い技術は、少人数の人が たくさんやるということにしないと、腕の悪い人が多くなって困る。 きちんと技量を評価するシステムがないために医療事故が多い。
[感想] たしかに、私たちのような素人は、どの先生が腕が良いのか分からないので、 いつも病院の選択に困る。きちんと情報を出して欲しいものである。

[(KH)の内容] 医療が一律料金である上に、国公立病院は赤字を穴埋めして もらえるから、競争原理がはたらかない。そのために医療の質が上がらない。 もちろん、競争原理を働かせるには、前提として情報公開が必要であることも 強調されている。
[感想] 医療は、普通の商品と違って素人には比較が難しいので、 競争原理をはたらかせることができるかどうかは本当に情報次第。 専門的な知識のある人に改善して欲しいところである。

[(KM)の内容] (KM)氏は諏訪中央病院の管理者。患者のニーズを考えた 医療をいろいろ工夫しているという。
[感想] (KH)では公立病院が批判されていたが、トップがうまくやると きちんと患者のニーズに合った医療をうまく工夫できるという例。 競争云々とはいっても、所詮、それぞれの努力次第である。 都会の病院でないだけ、変な野心がない分、患者のことを考えることが できるのかもしれない。