「リサイクル」汚染列島

武田邦彦著
青春出版社
刊行:2000/07/25
研究室サロン図書を借りた
読了日:2003/12/26

著者の武田先生は今名古屋大学におられ、しばらく前にある機会に 話をしてみたら実に面白かったので、本を読んでみた。 今日何となく手に取ってみたら数時間で読めてしまった。それだけ 読みやすく書かれているということである。 実は以前にも、著者の本である リサイクル幻想を読んだことがある。 基本的には主張はもちろん同じで、リサイクルをしてはいけないということだ。

リサイクルをしてはいけない理由は、最初の2つの章に主として書いてあり、 ひとつには、リサイクルをしていくにつれて毒物が蓄積すること、 もうひとつは、リサイクルは環境負荷が非常に高いことである。 環境負荷を低めようと思ってリサイクルしているのに、実際はその逆のことが おこる。この本で出てくるたとえを使うと、エアコンで部屋の中を冷やすことは できるが、トータルとしては空気を暖めているということになる。

LCA(ライフサイクルアセスメント)についても批判がなされている。 原理的にはもちろん LCA は良いのだが、2つ問題があって、 1つは必要なデータが企業秘密などで手に入らないこと、 もう一つは主婦は「暇でタダ」という設定をしていること、である。 武田先生とお話ししたときも、本質的な部分が計算できないために 抜け落ちているという批判をしておられた。

著者の結論として、廃棄物問題をどう解決したら良いか、の処方箋は 以下の3つである。

いずれも言われてみると当たり前のような気もするけれど、 まとめて書いてあるのは重要だと思う。

本書には、リサイクルに関連して専門家倫理などの話も書かれていて、 そちらも読んでいて面白い。

この本の不満な点を挙げるとすれば、一般向けだからしかたがないけれど、 計算の根拠があまり詳しく書かれていない点である。もちろん著者が 専門家向けに書いたものを読めば良いのだろうけど。