科学哲学の冒険     サイエンスの目的と方法をさぐる

戸田山和久著
NHK ブックス 1022、日本放送出版協会
刊行:2005/01/30
著者から頂戴した
読了日:2005/02/06

科学哲学の世界で常識的な実在論をどうすれば擁護できるかという話を軸にして 科学哲学の入門的な解説をしてくれている本。センセイ(戸田山センセイ役)と テツオ(文系常識を代表する学生)とリカ(理系常識を代表する学生)との 対話形式でかるーくわかりやすく書かれているので、すぐに読めてしまうのだが、 本当は中身は濃い。

最後は自然主義に行き着くところが私のような理系の人間にはしっくりくる。 帰納法はどうやって擁護できるかというと、「われわれの宇宙は帰納が うまくいくようにできているから」。そういえば、つい最近読んだ ウィトゲンシュタインの解説書 によると、ウィトゲンシュタインが「なぜ、自然数を 1,2,3,...,1000,1002,1004,... と数えないのか?」という「数列問題」に与えた解も「人間は そうするのが自然であるようにできているから」に近いものだった。

この調子でさらに自然主義を押し進めると、この本に載っている他の問題も 解決できそうな気がする。たとえば、「科学的説明とは何か?」の答えは 「人間の脳にとって分かりやすい問題の整理の仕方」ではないだろうか。


後日、伊勢田氏による専門的な批判を見つけた。