石油の終焉

生活が変わる、社会が変わる、国際関係が変わる

Paul Roberts 著、久保恵美子訳
原題:THE END OF OIL -- On the Edge of a Perilous New World
光文社
刊行:2005/05/30
原著刊行:2004
原出版社:Houghton Mifflin Company
名古屋名駅地下の三省堂名古屋テルミナ店で購入
読了:2006/03/25
現在と将来のエネルギーの見通しについて包括的に語っている本。 優秀なジャーナリストらしく広範な取材に基づいて、エネルギー問題のさまざまの論点を 網羅的にカバーしている。そのため、日本語版では 546 ページと浩瀚なものになっている。 石油問題の良い解説書が今まで日本では少なかったように思う。英語の翻訳とはいえ、 日本語で出版されたのは喜ばしいことだと思う。

論調は公平で、多くの人が認めやすい中庸な線を行っていると思う。石油の将来については けっこう悲観的だけれども、アメリカの政策の大転換が起これば、明るい将来像も描けるということが 最終章で議論されている。石油の将来に関して楽観的なことを言う人が日本には多いような気がするが、 ふつうに真面目に考えると、この程度に悲観的なのが妥当なところだろうと私は感じている。

本書の英語版が出版されたのは、近年の原油価格の高騰がはっきりし始めた 2004 年である。 今のように1バレル60ドルが続くような事態になるとは思っていなかったようだが、 価格高騰への懸念が随所に示されている。ただし、本書では単純に価格高騰が不況を招くことが 想定されているのに対し、現在の現実は、価格高騰にもかかわらず好況が維持されているのが 不思議といえば不思議である。

本書は全部文字だけで構成されており、図表がない。これは、講義で利用したいということを考えている 私にとっては不便である。図表があるともっとわかりやすくなるだろうにと思うのだが、文字文化を 尊重する文系ジャーナリストの意地なのかもしれない。でも、やっぱり数字の力を使わないのは、 私から見れば迫力不足に写る。

サマリーを取りながら読んだ。