日本沈没

小松左京著
小学館文庫 こ 11 1,2、小学館
刊行:2006/01/01
文庫のもとになったもの:1973/03 光文社刊
名古屋池下の古本屋 BOOK OFF 名古屋池下店で購入
読了:2008/08/30
言わずと知れた「日本沈没」。映画(2006 年版)を高校生相手の出張講義の題材にしようと思って読んだ。 本書の内容は、2006 年版映画とはずいぶん違っている。映画は、結局ラブ・ストーリーになっちゃっているのに対し、 小説版は、日本がなくなるということを題材にして、日本とは何か、日本の世界における位置とは何か、 日本人とはいかなる人々か、といった問題を書くということが主眼になった気宇壮大な物語である。 日本を描くために日本をなくしてみる、という手法は、最近読んだ小説では、顔を哲学するために顔をなくしてみた 安部公房の「他人の顔」 を思い出す。 この小説は安部公房ほど哲学的ではないけれど、著者の社会に対する批判眼をさまざまの角度から見せてくれる。

科学的イマジネーションも、これがプレートテクトニクスができたてほやほやの 1970 年代初頭に書かれたことを 考えると卓抜である。竹内均とか樋口敬二のような優れた地球科学者が入れ知恵したようだけど、 それにしてもよく書けていると思う。もちろん日本が短期間に沈没なんてするはずがないことなので、無理があるのは 当然としても、当時の科学の最先端知識がよく利用されている。