四季の地球科学―日本列島の時空を歩く

尾池和夫 著
岩波新書 新赤 1379、岩波書店 [電子書籍]
刊行:2012/09/20
底本:2012/07/20(第1刷) 岩波新書
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読了:2013/10/30
元京大総長で地震学者の尾池氏が、得意の俳句の知識も生かしながら、日本の風土とその地球科学的な背景を説明するという本。 著者が日本ジオパーク委員長ということもあって、ジオパークの宣伝も一つの狙い。 内容はなかなか盛りだくさん。盛りだくさん過ぎてそれぞれの説明が少し短いかなという気がする。 もちろん、短いことは私としては大して問題ではないのだが。

ちょうどジオパーク認定された佐渡に先日行ってきたこともあり、NHK 100 分で名著で「おくのほそ道」が 取り上げられたこともあり、今読んで楽しむのにちょうどよいかということで読んでみた。

第1章「太陽と地球と月と」では、太陽系の形成や天体の力学が地球に及ぼす影響のことが書かれている。季節としては春がテーマになっている。 私が初めて知ったことは、「春霞」が多くの場合黄砂だということだった。霞は薄い霧くらいに思っていたら、そうではないようだ。 霞、朧、霧、靄(もや)のうち、気象用語は霧と靄で、霧は濃いもの(視界が 1km 未満)、靄は薄いもの(視界が 1 km 以上)だそうな。 俳句の季語としては、霧は秋(ただし、夏の霧、冬の霧もある)、冬靄は冬、霞と朧は春。そして、日中は霞、夜間は朧とのこと。 というわけで、朧月夜は黄砂のせいということになるのであろう。

手枕に身を愛す也おぼろ月   蕪村
この句は本書にあったわけではなくて、ネットから拾ってきたものである。

第2章「地震と噴火の日本列島」は、活動帯としての日本の説明である。季節は夏がテーマである。夏の句の

五月雨をあつめて早し最上川   芭蕉
から始まる。これは、最上川が急流だったということを言っているわけで、それで、日本に急流が多いのは日本が活動帯にあるからだ、 ということで活動帯の話につながる。

活動帯の話としては、やはり専門である地震関連の話が注目され、興味深い。たとえば、

などといった話が書かれている。

第3章「森と里と海の国」は、秋なので、紅葉に月、海の幸と森林、伝統文化・伝統技術、山の風景と風流尽くし。

豆知識

第4章「日本海と日本列島」は、冬をテーマにしようということで、日本の日本海側が豪雪地帯であることから話を始める。 日本海側が豪雪地帯なのは、中緯度の縁海だからで、では、縁海がどうしてできたんですかということで、日本海拡大の話になる。 そうすると、話の主体は日本列島の形成ということになる。太平洋プレートの動く向きが 4800 万年前に変わったことで、 太平洋プレートがアジア大陸の下に潜り込むようになって、縁海が拡大したという説を取っている。 そのうち、話が気候変動から地球温暖化の話になって、豪雪の話に戻ってゆくというしかけになっている。

終章はジオパークの宣伝。「見る・食べる・学ぶ」で日本の自然風土を楽しみましょうということになる。